1 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ：2018/04/15(日) 23:31:18.09 ：QBNi0VoP0
最後に盛大なバースデーパーティーを開いたのはいつだっただろう。
劇場ができて5年。
アイドルをやめた人もいた。
入籍した人もいた。
海外に移住した人もいた。
まともにアイドルらしいアイドルを未だに続けているのは未来と紬くらいのものだろう。
年が経つ度に全員集まるのが難しくなり、みんなで誕生日を祝っていたのが思い出せなくなるところまで来てしまった。
2 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ：2018/04/15(日) 23:33:07.78 ：QBNi0VoP0
「恵美？ どうした？」
プロデューサーに話しかけられ、ふいに我に返る。
ダメだダメだ。運転手の相手は助手席に座ってる人の仕事みたいなものなのに。
気持ち切り替えていかないと。
「う、ううん。なんでもない！」
「そっか……いやー。暗くなるのが遅くなったなあ」
「あー、そうだねー」
確かにもうそんな季節だった。この前までは冬だったのに、もう桜も散りかけてる。
毎年毎年、季節がすぎるのが早くなって……
3 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ：2018/04/15(日) 23:34:27.75 ：QBNi0VoP0
「まさか、アタシがアイドルをやめるなんてねー……」
ふいに、そんな言葉が口から出てしまっても。
一体誰が責められるというのだろう。
「……撤回するか？」
「しないよ。1回言ってやっぱり取り消しなんてださいじゃん。そういうの」
そういうのは、格好よくない。
アイドル時代にアタシに憧れてメイクを真似してるって女の子を見た覚えがある。
アタシももう子供ではいられない。誰かがアタシの背中を見て同じ道を歩いている以上、その子を裏切るような真似はできない。
4 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ：2018/04/15(日) 23:36:41.90 ：QBNi0VoP0
「だよな……今日でアイドルも終わりだもんな」
「まさか誕生日にねえ。ドラマでもあるまいしさ」
そう。今は収録が終わった帰りで、プロデューサーに送ってもらっていて。
今日からこの人は、アタシのプロデューサーではなくなるんだ。
明日からアタシ……私は、劇場で照明として働き始める。
誰かを輝かせたいと思ったのがきっかけだった。
『私は、舞台に立つよりも舞台に立つ人を支える裏方が合っている』
5年間アイドルを続けてきて出た結論がこれだった。
アイドルとしては出来損ないで、プロデューサーには申し訳ないけど。
これが『所恵美の生き方』なんだから仕方ない。
5 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ：2018/04/15(日) 23:37:30.64 ：QBNi0VoP0
「なあ、恵美」
「ん？」
プロデューサーに呼ばれ応える。
続いた言葉は、思いがけないものだった。
「アイドルは楽しかったか？」
「……うん。もちろん。アイドルが出来て幸せだったよ」
問いかけられ、即答する。
本当に。本当に楽しかった。
アイドルとしては3流で、スキャンダルがなかったこと以外は本当にダメだったけど。
「よかった。俺も、恵美をプロデュース出来て幸せだったよ」
ああもう本当に。なんでこの人は私が欲しい言葉をいつもくれるんだろう。
6 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ：2018/04/15(日) 23:38:06.96 ：QBNi0VoP0
「……ありがと。あ。プロデューサー。私コンビニ寄るからさ。ここでいいよ」
ちょうど目の前にコンビニの看板があったのをいいことに下ろしてもらう。
流石にこの年で泣き顔を見られるのは恥ずかしい。
「ああ、わかった。恵美」
「もー。今度は何？」
あと30秒だ。自分にそう言い聞かせて半開きのドアからプロデューサーをのぞき込む。
「誕生日おめでとう。明日からもよろしく」
「……うん。こっちこそ。明日からもよろしくね！」
7 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ：2018/04/15(日) 23:40:17.03 ：QBNi0VoP0
終わりです
2013年にグリマスが始まって毎年年齢を重ねてたらもう恵美も成人なんだよなあって思ってたらこんな話になってました
恵美。誕生日おめでとう。
来年も恵美の誕生日をこうして祝えますように
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【SS速報VIP】【ミリマス】恵美「Brand New Myself」
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