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小日向美穂「ラブストーリーは突然に」
ヴァンパイアハンター凛
アナスタシア「夜空の星を、ひとしずく」
小日向美穂「ラブストーリーは突然に」
ヴァンパイアハンター凛
アナスタシア「夜空の星を、ひとしずく」
1 :名無しさん@おーぷん:2017/08/02(水)14:16:45 :qru(主)
「アイドルを殺したいだけで表現力がない」という指摘を受けたので、表情と感情表現の練習に
みじかめ
前作
小日向美穂「ラブストーリーは突然に」
ヴァンパイアハンター凛
2 :名無しさん@おーぷん :2017/08/02(水)14:19:11 :qru(主)
【アナスタシア】
無数の星々と、無慈悲な月光が1人の女をくっきりと浮かび上がらせている。
夜風にさわさわとさざめく、優美な長髪。
憂いの色を帯びた、白くしなやかな指先。
かすかに赤くなった小鼻と、やわらかな頬。
その頬に、静かに煌めきながら伝う涙。
半ば胸がつぶされるような、また、半ば陶然としたような気持ちで、
アナスタシアは美波のいるベランダを見ていた。
2人は少し長めにとった休暇を使って、旅をしている。
3 :名無しさん@おーぷん :2017/08/02(水)14:20:31 :qru(主)
先月、美波のプロデューサーは定年退職を迎えた。
彼のことを、アナスタシアはあまり知らない。
美波とは…親友として、深い関係にあったけれども、
仕事についてはお互いに立ち入った話はしなかった。
ただ、“それとなく”周りから聞こえる声に耳を傾けると、
彼が美波にとっては、第二の父親のような存在だったらしい。
彼女をアイドルとして見出し、
黒く激しい波が粛々と打ちつけるような下積み時代でも、
美波を見捨てることなく導いたという。
定年前に、美波とアナスタシアを
ペアユニット『ラブライカ』としてデビューさせることを提案したのも
このプロデューサーだった。
4 :名無しさん@おーぷん :2017/08/02(水)14:22:16 :qru(主)
決して高い地位にいたわけではなく、いわゆる現場の人であったが、
温厚で面倒見がよく、美波以外のアイドルや職員達からも慕われていた。
ちょうど別の仕事が入っていたアナスタシアは参加していなかったが
彼の送別会に際して、美波は笑顔で見送ったと聞いている。
美波の涙を知っているのは、自分ただ1人。
アナスタシアは奇妙な優越感を胸に抱いた。
5 :名無しさん@おーぷん :2017/08/02(水)14:23:10 :qru(主)
美波とってプロデューサーは本当に、ただの恩人だったのか。
彼を見つめる視線に含まれていたのは、
ただ純粋な尊敬と感謝のみだったのだろうか。
なぜ自分がこんなふうに考えてしまうのか、アナスタシアにはわかっている。
わかっているが、知らないふりをして美波と共にいることを選ぶ。
“それ”は許されないことで、おそらく、美波も受け入れてはくれない。
甘く苦い疼痛が静かに、こめかみを這う。
6 :名無しさん@おーぷん :2017/08/02(水)14:24:03 :qru(主)
アナスタシアは、しずかにベランダへ歩んだ。
励まさなければ。
彼女の心に空いたスキマの広さが、
自分の背丈と見合うかどうか悩みながら。
いま、“ここ”にいるのは自分なのだから。
7 :名無しさん@おーぷん :2017/08/02(水)14:25:56 :qru(主)
【新田美波】
美波が足音に気づいてふりかえると、親友の姿があった。
蒼氷色の瞳は困惑するように、ゆらゆらとさまよっている。
「せっかくの楽しい旅行なのに、ごめんね…」
美波は、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
プロデューサーのことで気持ちが沈んでいたから、
気分を変えるために旅をしている。
1人では、どうしようもなく寂しかったから、
アナスタシアを誘った。
それなのに私…。
8 :名無しさん@おーぷん :2017/08/02(水)14:28:45 :qru(主)
涙を拭おうとすると、アナスタシアが両手をとって、それをさえぎった。
かすかなふるえが伝わってきた。
そして彼女は戸惑いながらも、美波の瞳にくちづけをして、
夜空の雫をさらっていった。
9 :名無しさん@おーぷん :2017/08/02(水)14:38:02 :qru(主)
「Прости …これは…、ロシアの、夜の挨拶です」
くちびるを離したあと、
とても、とても悲しげな表情をしながら、アナスタシアはそう告げた。
彼女の瞳が、こぼれてしまうほどに揺らめいている。
「……ごめんね」
美波はアナスタシアを、そっと抱きしめることしかできなかった。
10 :名無しさん@おーぷん :2017/08/02(水)14:38:10 :qru(主)
おしまい
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【おーぷん2ch】アナスタシア「夜空の星を、ひとしずく」
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