1 :名無しさん@おーぷん:2017/07/22(土)00:00:01 :8s3(主)

アイドルマスターシンデレラガールズです。
しゅがーはぁとこと佐藤心さんのお話です。


2 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:00:41 :8s3(主)

「お疲れ様です。良いステージでしたよ」

「だろう☆ あ、タオルありがと☆」

 今日のお仕事はショッピングモールでのフリーライブ。足を止めれば私が見られるし、足を止めなくても私の歌声が聴ける。そんな環境でのライブ。

「ふぃー。やっぱり室内とは言え夏だと暑いね☆」

 ステージに立っている最中は顔に汗をかかないのだが、ステージから捌けると顔中に滝のように汗が流れ出す。

 控室に向かいながら、プロデューサーが用意してくれていたタオルを使って汗を拭ってしまう。メイクが崩れるけど、汗だくな私を晒すよりはまだマシだろう。

 それに、はぁとはスッピンでも美人だしね☆

「ステージの上だと照明の熱もありますからね。冷房って言ってもやはりこれだけ開けた空間だとあまり期待は出来ませんし」

「それはそうなんだけどね☆」

 でも、夏の暑さはそんなに嫌いじゃない。かれこれ20年以上夏とは付き合ってきている。それに、産まれた瞬間から夏に生きている女なのだ。これくらいでへこたれるわけにはいかない。


3 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:01:02 :8s3(主)

「あー、でもやっぱり暑いな☆」

 言っても仕方がないのだけど、それでも言いたくなってしまう。

「あはは。控室に冷たい飲み物用意してありますよ」

「お、さっすがプロデューサー♪ 気が利くね☆」

「いえいえ、この程度で良ければいくらでも」

「「あはは」」

 二人して声を揃えて笑う。だってプロデューサーとこうしていると楽しいから。

 もちろん、アイドルやってる時も楽しいけどね☆

 それでも、私だって24時間365日アイドル「しゅがーはぁと」では居られない。1日の大部分は「しゅがーはぁと」だけど、たまには「佐藤心」として過ごす時間も大事だと思う。

「あ、心さん。この後の予定ですが、朝も言った通りに今日のお仕事はこれでお終いなので、フリーです」

「わかってるぞ☆ プロデューサーは? 時間ある?」

 私の予定はきちんと把握しているけど、プロデューサーの予定までは私は知らない。お仕事に着いてきてもらえてると思ったら、目を離した隙に別の現場に行っているなんて事もしばしば。


4 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:01:20 :8s3(主)

「俺ですか? 俺も今日は心さんの仕事の付き添いだけなので久々に半休ですよ」

「マジか☆」

 何人ものトップアイドルを担当しているプロデューサーは本当に忙しいみたいで、お休みを取っているところなんて滅多に見たことが無い。その上、こうして私と休みが被るのなんて奇跡とも言えるんじゃないだろうか。

「じゃあさ、これから付き合ってくれない?」

「俺で良ければ喜んで」

「ふふっ☆ ありがとね☆」

 思いがけずにデートの約束を取り付けられて、ちょっとご機嫌になってしまう。もしかするとステージに立っている時くらいご機嫌かもしれない。

「じゃあ、ちゃちゃっと準備しちゃうから待っててね♪」

「はい。その間に事務所に報告だけしてきますね」

「ん☆」

 私が控室に引っ込むとプロデューサーはスマホ片手にどこかへ歩いて行ってしまった。ここで連絡入れるのかと思ったのだけど、どうやら違うらしい。


5 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:01:33 :8s3(主)

「どっかで座って落ち着きたいのかな? ……別に入ってきてくれてもいいんだけどなー」

 控室の中なら椅子もあるし、座って連絡は出来る。それに、私の生着替えを見られるという特典付きだ。

「……な、なーんちゃって。えへへ……」

 先ほどの考えを首を振ってどっかに追いやってしまう。駄目だな。きっと暑さで頭がオーバーヒートを起こしているのだろう。もっと冷静に……冷静になるんだ、佐藤心。

 冷静になる事を意識しながら、これからプロデューサーと会っても見苦しくないように身支度を整える。乙女が汗臭いなんて論外だしね☆

 メイクも一度落として、年相応に落ち着いたものに。ステージ映えするメイクと、普段のメイクはまったく違うものなのだ。

 変装の意味も込めて髪型も違う物に。手持ちの道具じゃそんなに凝った事は出来ないけど、せっかくだし綺麗とか可愛いって言ってもらえるように頑張ろう。

 ……なんて事をあれやこれやとしていたらいつの間にか1時間くらいが経過してしまっていた。


6 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:01:47 :8s3(主)


「本日はありがとうございました。是非、また機会がありましたら佐藤をよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 控室を後にしてプロデューサーと合流してから、今日のフリーライブを企画してくださった色々な人にお礼を言って頭を下げる。

 こうやって顔を売って、次の仕事に繋げていく。デビューした時から、……いや、デビューする前からずっと続けている事だ。デビュー前と違うのは一緒に頭を下げてくれる人が居る事かな。

「さて、じゃあ挨拶も終わりましたし行きますか。忘れ物はありませんか?」

「うん☆ だいじょぶだぞ☆」

 ここからはアイドル「しゅがーはぁと」にはちょっとだけ休んでもらって、次の仕事の時までにまたパワーを充電してもらおう。

 と言うわけで、ここからは「佐藤心」の出番だ☆


7 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:02:12 :8s3(主)

「ところで、俺はどうすればいいんですか?」

「私のお買い物に付き合ってくれれば良いぞ☆」

「わかりました。何を買うんですか?」

「んー……。買いたいものがあるか探しに行く、感じ?」

「ウィンドウショッピングってやつですか」

「まぁそうだね☆」

 そう言えば男性は買う物を決めてから買い物するんだっけ。だから男性の買い物はすぐに済むとか。

 一方、私達のような女子は買いたいものを探しながら買い物をするから時間がかかってしまうとか。

「まぁ、お休みですし、とことん付き合いますよ」

「ありがと☆ ……じゃあ、まずはプロデューサーの服でも買いに行こっか☆」

「え、俺のですか!?」

「せっかくの休みなのにスーツじゃ休めないだろ☆ ほら、行くぞ~♪」

 せっかくのデートなんだし、お相手がスーツのままじゃちょっと味気ないよね☆


8 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:03:59 :8s3(主)


「疲れた……」

「あはは☆ ごめんごめん☆」

 プロデューサーの服を一式買って、その場で着替えてもらってからはショッピングモール内をずっと練り歩いてきた。その間に買ったものは特になし。

 私の気に行ったものが見つからなかったのもあるけど、こうして二人で一緒にお店を見て回っているだけでも充分に満足してしまったので、特に何かを買おうって気分にならなかったのだ。

 ちなみに今は一階にあるカフェで休憩中。プロデューサーの前にはホットコーヒー、私の前にはパフェ。

「ん~☆ スウィーティー☆」

 やっぱり甘い物は幸せになれる。体重計とか色々な事にはとりあえず目をつぶっておく方向で……。

「……」

「……? なに?」

「あ、いえ。心さんって幸せそうに食べるなって思いまして」

「そう? みんなこんな感じじゃない?」

 菜々先輩だってマリナルだって。女の子は大抵甘い物好きだし、食べていると幸せそうに見えるけど。

「あはは。かもしないですね」

 微笑みながら自分のコーヒーをすするプロデューサー。そういやプロデューサーって甘い物あまり食べないよね。コーヒーもブラックで飲んでるし。


9 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:04:16 :8s3(主)

「あ、プロデューサーも食べてみる? きっとプロデューサーも同じ幸せな気分になれるぞ☆」

 疲れてる時には甘い物が良いって言うしね☆

「ん? どったの?」

 私がスプーンでパフェをすくってプロデューサーに差し出しているのに、プロデューサーは固まってしまった。

「あー……いや、アイドルと関節キスってプロデューサーとしてどうなのかなって思いまして……」

「……っ!?」

 言われてから気が付いた。つい、他のアイドルの娘達と同じ感覚で居た。冷静に考えてみたらこれって間接キスだ。

「い、いいし! 今の私は『しゅがーはぁと』じゃなくて『佐藤心』だし ほら! 早く! 落ちるから! あーんっ!」

 我ながら無茶苦茶な理論で、無理矢理プロデューサーにあーんをする。プロデューサーも観念したのか、ちょっとだけ恥ずかしそうに私がすくったパフェを食べてくれた。


10 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:04:36 :8s3(主)

「ありがとうございます。……久々に食べると美味しいですね」

「……」

「心さん?」

「ふぇっ!? な、なに!?」

「え? 久しぶりに食べると甘い物が美味しいですねって……」

「あ、そうだね! そうだろ☆」

 い、いけない……。プロデューサーが口をつけてくれたスプーンを凝視していたらプロデューサーの言葉がまったく入ってきていなかった。

 ……間接キスの難易度高いところって、もう一度同じものに口をつけなければいけないところだよね。

 いい歳して間接キスの一つや二つで何を怖気づいているのか。早くパフェを食べる作業に戻らないとプロデューサーが不審がるじゃないか。

 大丈夫……いつも菜々先輩とかマリナルとやっている事と何も変わらない。ただ、相手がプロデューサーなだけ……。

「……あぅ」

「心さん?」

「な、なんでもないよ☆ ないぞ☆」

 駄目だ、意識すればするほどどんどんと恥ずかしくなってくる。落ち着け、落ち着くんだ佐藤心。心を無にして食べるんだ。

 なんて事をしていたら、パフェの味がさっぱりとわかりませんでした。


11 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:04:51 :8s3(主)


「あー☆ 楽しかった♪」

「満足しましたか?」

「うん♪ とっても☆ ありがとね☆」

 長い夏の日が傾き始めた頃に私とプロデューサーはショッピングモールから駅に向かって歩いていた。

 タクシーを拾うつもりだったんだけど、ショッピングモールから出てみると思ったよりも暑くなかったので、駅まで歩く事にしたのだ。

 ちょっとはしゃぎすぎちゃった気がするけども、滅多にないプロデューサーとのデートだったし、仕方がないだろう。

「~~♪」

「ご機嫌ですね」

「だって楽しかったからね☆」

「それは何よりです」

 鼻歌を歌いながらプロデューサーと一緒に駅まで歩く。最近忙しなかったし、たまにはこんな風にのんびりと過ごすのも悪くないよね。


12 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:05:15 :8s3(主)

「あ……」

「ん? どうしました?」

「あれ」

 軽い足取りでご機嫌に歩いていたら、反対側の歩道に小学生くらいに見えるお兄ちゃんと幼稚園児くらいに見える妹ちゃんが居る事に気が付いた。

 別にただの兄妹なら私がこうして目を止める事もなかったのだが、その兄妹はお兄ちゃんが妹をおんぶしていたのだ。

「……怪我でもしてるんですかね」

「かなぁ……?」

 もしかしたら妹ちゃんが足を怪我して動けなくなっているのかも知れない。それなら手を貸した方が良いのだろうか。

「あ」

「あー」

 と、思っていたのだがどうやら違ったらしい。疲れたのかお兄ちゃんが妹ちゃんを降ろすと、妹ちゃんがしばらくお兄ちゃんの横に並んで歩きながら何やら言うと、お兄ちゃんはまた妹ちゃんをおんぶし始めた。


13 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:05:40 :8s3(主)

「きっと妹ちゃんがワガママ言ってお兄ちゃんに甘えてるんだね☆」

「みたいですねぇ」

「可愛いなぁ……」

 私も昔にああやってよっちゃんをおんぶして家まで帰った事がある。

 どういう経緯でよっちゃんをおんぶする事になったのかまでは覚えていないけど、私がよっちゃんを降ろすとよっちゃんは泣いて文句を言ってきたのだけは覚えている。それで結局、私がひーこら言いながら家までよっちゃんをおんぶして帰ったのだ。

「下の子が上の子に甘えるのって今も昔も変わらないんだね☆」

「あはは、かもしれないですね。もしかして心さんも似たような経験があるんですか?」

「うん☆ 私はお姉ちゃんだからね☆」

 時には喧嘩もしたけど、やっぱり妹は可愛いから妹に頼られるとお姉ちゃんとしては頑張らなきゃいけない気分になる。


14 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:05:57 :8s3(主)

「昔はさ、お兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しかったなんて思ったりもしたけど、あんな風に妹をおんぶ出来るのは私がお姉ちゃんだからだよね」

 きっと、私に兄か姉が居たらよっちゃんは私に甘えてくれなかった気がする。やっぱりそれは少し寂しい。

「ま、甘えられるのはお姉ちゃんの特権だし、甘えるのは妹の特権だよね☆」

 道路越しに兄妹を見ながら歩いていたのだが、私がそんな事を言った頃に兄妹は道を曲がって私達の視界から消えてしまった。

「……プロデューサー?」

 先ほどから返事が無いプロデューサーが気になって、横を向いてプロデューサーに呼びかけてみると何やら考え込んでいる様子だった。

「ふむ」

「ふむ?」

「心さん。今から駅までは俺がお兄ちゃんです。甘えてきてくれて良いですよ」

「はい?」

 一体こいつは何を言っているんだ。


15 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:06:14 :8s3(主)

「ほら、おんぶしてあげますよ。さ、乗ってください」

 プロデューサーに色々ツッコみをしたいのだが、プロデューサーはその隙を私に与える事なく、背中を向けると屈んでそんな事をのたまった。

「しょ、正気か……☆」

 いい歳した大人が公共の場でおんぶされるって、どんな羞恥プレイだ。

「今なら周りに人が居ませんし。最近ずっと心さん頑張ってくれてたじゃないですか。だからご褒美ですよ」

 ……確かに今は周りに誰も居ない。いや、もしかすると誰か居るかもしれない。でも、少なくとも私の視界には入ってこない。それは居ないのと同じではないだろうか。

「……えっと、その……、し、失礼します……」

「どうぞ」

 しばらく色々な事を、まぁ主にはスキャンダルとかだけど。そんな事を考えた結果、私は遠慮がちにプロデューサーの背中に乗った。お、重くないかな? 汗臭かったりとかは大丈夫かな……。


16 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:07:21 :8s3(主)

「じゃあ行きますよっと……!」

「わわっ!」

 プロデューサーが私に一声かけた後に立ち上がって歩き始めた。誰かにおんぶされるなんてなんだか不思議な感覚だ。そりゃ私だって小さいころは両親におんぶしてもらった事はある。

 でも、そんなのは遥か昔。だってよっちゃんが産まれてからは、いつもお姉ちゃんなんだから我慢してって言われてきたのだから。

「へへっ……」

「急に笑ってどうしました?」

「んーん、なんでもなーい☆」

 こうして誰かの背中に身を預けていると、とてもあったかくてとても安心する。歩くスピードも普段よりもゆっくりと、一歩一歩踏みしめるようで。

 なるほど。今ならあの時によっちゃんが私におんぶをせがんだ理由も分かるような気がする。

「ありがと……プロデューサー☆」

 プロデューサーの耳元に口を寄せて小声でお礼を言う。普段なら身長差があるからあんまり耳打ちなんて出来ないけど、おんぶされているとこんなに自然に出来るんだね。


17 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:07:41 :8s3(主)

「今の俺は心さんのお兄ちゃんですからね。お礼なんていらないですよ」

「うん……☆」

 昔に私が願った、お兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しいと言う願いは期せずして叶ってしまった。でも……。

「ん☆ もう満足したから降ろして☆」

「良いんですか? まだ駅まではありますよ?」

「うん☆ 妹気分はここまででいいから☆」

「そうですか? じゃあ、降ろしますね」

 ほんの数十メートル、時間にしてもわずか数分だけ。それでも私は充分に満足出来た。やっぱり、私はお姉ちゃんだし、おんぶされるよりはおんぶしてあげる方が性に合っている。

「改めて、ありがとね♪」

「気にしないでください。俺も妹欲しいなって思った事ありますし」

「あはは♪ そうなのか☆」

「はい。なので、またお兄ちゃんが欲しくなったらいつでも言ってください」

「ん☆ わかった☆」


18 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:07:54 :8s3(主)

 でも、きっと私がプロデューサーをお兄ちゃんにすることはないだろう。だって、プロデューサーにはお兄ちゃんじゃなくて……ね?

「ふふっ☆」

「? なんですか?」

「なんでもなーい☆ さ、駅まであとちょっとだぞ☆」

 自然とプロデューサーに手を伸ばす。おんぶよりは恥ずかしくないし、やっぱりデートと言えば手を繋ぐのは定番だよね☆

「……はい」

 私の右手とプロデューサーの左手をしっかりと繋いで、残り少ない駅までの道をほんのちょっぴりとスピードを落として歩く。

 ゆっくりと、一歩一歩踏みしめるように。

End


19 :名無しさん@おーぷん :2017/07/22(土)00:13:28 :8s3(主)

以上です。

7月22日はしゅがーはぁとこと佐藤心さんのお誕生日です!おめでとうございます!
歳の話はすんなよ☆すんな☆って言ってそうですね。
でも、めでたいので盛大に祝ってあげましょう!

では、お読み頂ければ幸いです。


おーぷん2chに投稿されたスレッドの紹介です
【おーぷん2ch】佐藤心「ゆっくりと、一歩一歩踏みしめるように」
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