アイドルマスターシンデレラガールズ 渋谷凛のSSです

アイドルそれぞれに担当Pがいます


2 :◆Ceuv.hziBQ :2017/06/19(月) 01:08:03.50 :gyZLNYL10

凛「……ふぅ」


深呼吸を一度。

目を開けると見えるのは地方都市の夜景。

都会のギラギラした景色とは違い、小さな小さな宝石箱の中のような綺麗な明かり。

私は一人、それをバルコニーから眺める。


凛「……こんな素敵な場所があるなんて」


今日は事務所主催の記念パーティーがあり、私達アイドルを始め社員全員がこの会場に来ていた。

設立何周年だとか……忘れたけど。

……パーティーはもう中盤過ぎ。大人たちはだいぶ出来上がってるみたい。

普段接する機会の無い社員さん達との会話に疲れた私は、ここで一息ついていた。


凛「……そろそろ、戻ろうかな」

奈緒「おーい、凛」

凛「奈緒。……奈緒も休憩?」

奈緒「んー、まぁそんなところ。プロデューサーさんに連れまわされて大変だったよ」

凛「相変わらず仲良しだね」

奈緒「……仲良いかぁ? あたしは馬鹿にされてる気しかしないけど」

凛「嘘言っちゃって。いつも楽しそうにしてるのに」

奈緒「……う……ま、まぁプロデューサーさんと一緒にいるのは……嫌いじゃないし。……むしろ良い、かも」


そう言った奈緒の頬はみるみる赤くなっていった。

奈緒はすぐに顔に出ちゃうんだから。


3 :◆Ceuv.hziBQ :2017/06/19(月) 01:08:45.88 :gyZLNYL10

凛「今みたいに素直になってあげたら? 奈緒のプロデューサー、喜ぶよ」

奈緒「うぅ……は、恥ずかしいから無理かな……」

凛「ふふっ。そんなところが奈緒らしいね。かわいいよ」

奈緒「なんだよー、凛までからかうのかー? ……あ、ごめん。来て早々だけど戻るよ」


奈緒は小さな腕時計を見て話を切り上げた。

確か、奈緒のプロデューサーが誕生日にプレゼントしてた物だったかな。


凛「何かあった?」

奈緒「アレだよ、社交ダンスがあるからな。プロデューサーさんを探さなくちゃ」

凛「もうそんな時間?」

奈緒「あと少しあるけど、早めに捕まえておかないとベロベロに酔っ払っちゃうからさ、アイツ」

凛「なんだ、ちゃんとプロデューサーにアピールしてるんだね。一緒に踊るなんてさ」

奈緒「違う違う! 誘われたんだって! なのにアイツ、お酒飲もうとするしさ。あれじゃダンスできなくなったらどうするんだよ」

凛「はいはい、お幸せに」

奈緒「し、幸せってなんだよ…………そんなのまだ……!」

凛「まだ……? それじゃいつかは、って事か」

奈緒「い、いやいや!! 今のはそういう意味じゃないからな!? ……あぁもう、先に行ってるからなー!」

凛「私もすぐ戻るよ」

奈緒「ここ寒いから早く中に入れよなー」


4 :◆Ceuv.hziBQ :2017/06/19(月) 01:09:32.14 :gyZLNYL10

奈緒は嬉しそうな顔をしながらバルコニーを後にする。

私はまた一人。

手すりを触るとヒンヤリ冷たい。ブルっと身体が震えて疲れた脳が起き上がった感じがした。

…………そういえば、私のプロデューサーはどこに行ったんだろ。

会場の中では一緒にいたのに。


凛「……」

加蓮「あれ? 凛じゃん。どうしたのこんな所で」

凛「あ、加蓮……ちょっと休んでたんだ。さっきまで奈緒もいたんだよ」

加蓮「ははーん。だからか、さっき奈緒が顔赤くしてたのは。またからかったんでしょ?」

凛「ふふっ。ちょっとね」

加蓮「奈緒のプロデューサー絡みだってのはすぐ分かったけどね。 ……私もそんな感じだけど」

凛「え?」

加蓮「これからダンスあるでしょ? プロデューサーさんの事を意識したら顔が熱くなっちゃってさ」

凛「あぁ……」

加蓮「だから外に行って落ち着こうと思ったの」

凛「ふーん、いつもはグイグイ攻めてるクセに。今日だってあんなに張り切って準備してたじゃん」

加蓮「だって! その時になったら緊張してきちゃって……プロデューサーさんと手を取り合って、顔合わせて……密着して……はぁぁぁ……」

凛「加蓮、顔真っ赤」

加蓮「も、もう! 茶化さないでよ! ……そんな凛こそどうなの」

凛「私?」


5 :◆Ceuv.hziBQ :2017/06/19(月) 01:10:07.17 :gyZLNYL10

加蓮「凛も自分のプロデューサーと踊るんでしょ? その……緊張とか、しない?」

凛「……そうだね。あまり緊張しないかな」

加蓮「……」

凛「こんな綺麗なドレスで着飾っていても、私はこのままの……いつもの渋谷凛をプロデューサーに見せてあげたいんだ」

加蓮「…………そっか。凛らしいね」

凛「そうかな?」

加蓮「凛の良いところだと思うよ。……うん、なんかスッキリした! 私もう行くね」

凛「あんまり落ち着かなかったかな。ごめん」

加蓮「気にしないで。……私もそのままの自分をプロデューサーさんに見せてくる。ありがと」


加蓮が去った後、会場の中から音楽が流れてきた。

この音楽は……社交ダンスが始まったのかな。

中に入ろうと振り返った瞬間、私は何かにぶつかってしまった。


6 :◆Ceuv.hziBQ :2017/06/19(月) 01:10:55.39 :gyZLNYL10

凛「わぷっ!?」

P「おっと……」

凛「ぷ、プロデューサー!?」

P「ぶつけたところ、大丈夫か?」

凛「なんともないけど…………よく分かったね。私がここにいること」

P「奈緒ちゃんが教えてくれたんだ。お姫様が待ってるってね」

凛「な、奈緒……」


これは……今度奈緒に会ったらいじられそう……。

逆にいじるネタを考えておかないと。


凛「まぁそれはいいとして……プロデューサー、私のこと真後ろから見てたんだね」

P「いやぁ、声かけようとしたんだけど、凛とこの場所の雰囲気が凄く合ってて……見入ってた」

凛「……なにそれ」

P「天使みたいでとても綺麗だったよ」

凛「ふーん、そう」

P「あ、アレ? それだけか? 照れるかと思ったのに」

凛「それだけだよ。盗み見するプロデューサーなんかにときめかないから」

P「くっ……残念。……冗談はさておき、中に入ろうか。もうダンス始まってるし」

凛「……んー……ねぇプロデューサー」

P「どうした?」


私の中でちょっとした悪戯心と企みが浮かんだ。


7 :◆Ceuv.hziBQ :2017/06/19(月) 01:11:41.60 :gyZLNYL10

凛「ここで踊らない?」

P「こ、こんな場所でか!? 狭いし、何より寒いだろ」

凛「大丈夫。私はこれくらいの広さで十分だし、寒くないよ。……ほら、こうすればね」

P「……凛」

凛「うん。温かいね、プロデューサーの手」


プロデューサーの手をギュッと握る。

男の人の固い手。私の大事な人の手。


P「…………俺の方が照れちゃった」

凛「あはは! さっきの仕返しだよ、プロデューサー」

P「参ったよ。……中の音楽も聞こえるし、このまま踊ろうか」

凛「うん」


私たちは改めてお互いの手を握り締める。

その場でクルッと一回転。

見よう見まねだけど……それとなく出来ている、かな? 普段のレッスンのおかげかも。


8 :◆Ceuv.hziBQ :2017/06/19(月) 01:12:18.93 :gyZLNYL10

P「今の動き、良かったな」

凛「ふふっ、ありがと。じゃあもう一回」

P「おぉっとと」

凛「プロデューサー、ちゃんと合わせてね」

P「…………こういうダンスってさ」

凛「何?」

P「やっぱり慣れてないと上手く出来ないもんだな。結構ハードだし」

凛「それ、運動不足じゃないの?」

P「ちゃんと営業で歩いてるから違うはず……」

凛「最近いつも事務所にいる気がするけど?」

P「……ごめんなさい。今度から真面目に営業します……」

凛「ふふっ、頑張ってねプロデューサー」

___


凛「プロデューサー」

P「ん?」

凛「気になってたんだけどさ、このドレスってプロデューサーが用意してくれたんだよね?」

P「おう。凛によく似合ってるだろ」

凛「う、うん。似合うの選んでくれたのは嬉しいんだけど……じゃあ、この花も?」


私は足を止めてドレスの胸元に付いている小さな花を見る。


9 :◆Ceuv.hziBQ :2017/06/19(月) 01:12:45.00 :gyZLNYL10

P「もちろん。これは紫のカトレアだ。えぇと花言葉は……」

凛「大人の魅力。魅惑的。優美な女性、だったかな」

P「……さすが花屋の娘さん……」

凛「私が詳しいの知ってるくせに」

P「あぁ、知ってる。……カトレアにした俺のセンスは凛から見たらどうだ?」

凛「なんていうか……私、プロデューサーからは大人に見えるのかなって」

P「スカウトした時と比べたらずっとな。最初はただ無愛想な女の子だったから」

凛「あ、あれは……まだ知り合って間もなかったんだし仕方ないじゃん。私、意外と人見知りなんだから」

P「はははっ! ま、それだけ凛も成長したって事だ。さっきだって初対面の社員さん達とちゃんと話せていたしな」

凛「そう、かな」

P「あぁ。花言葉通り、凛はこれからもっと大人になって、綺麗になっていく。……それでもたまに見せる可愛らしさが俺は好きだけどね」

凛「…………そう……」

P「おやぁ? 凛、今照れただろ」

凛「……なんも照れてないよ。プロデューサー、次変な事言ったらもう一緒に踊ってあげないから」

P「マ、マジですか。……はい、もう言いません……」

凛「ふふっ! ほらプロデューサー、ちゃんと手をつかんで。離さないでね」


私たち二人はまた踊り始める。

さっきよりも動きは少し激しく。

だって、今の心臓の音を聞かれたくないから。


10 :◆Ceuv.hziBQ :2017/06/19(月) 01:13:22.14 :gyZLNYL10

終わりです

凛かわいい

依頼出してきます


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【SS速報VIP】渋谷凛「二人だけの舞踏会」
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