【SS速報VIP】北条加蓮「……」高森藍子「……加蓮ちゃんと、桜の日の夜に」
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■レンアイカフェテラスシリーズ
北条加蓮「カフェに1人で来た日の話」
高森藍子「カフェで加蓮ちゃんを待つお話」
高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「ちょっと疲れた日のカフェで」
高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「春風のカフェテラスで」
北条加蓮「……」高森藍子「……加蓮ちゃんと、桜の日の夜に」
1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:52:47.68 :NDIf1Rs60
……。
…………。
(ん……)ゴシゴシ
(……まだ、……身体が重いな……)
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:53:22.77 :NDIf1Rs60
――加蓮の部屋――
(何時……?)
(……夜なのかな。暗いし……。でも、ちょっとだけ、橙色……)
(豆電球……? つけてたっけ? 切って、なかったっけ……?)
(……真っ暗にしたくて……なにも、考えたくなかったから、ぜんぶ、切ったハズなのに――)
「……!」
(?)
(誰かいる? ……お母さん?)
北条加蓮「ん……」オキアガル
高森藍子「…………」
加蓮「え? 藍子……?」
藍子「……横になってて下さい、加蓮ちゃん。まだ、しんどそうだから……」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:53:52.93 :NDIf1Rs60
――まえがき――
レンアイカフェテラスシリーズ第46話です。加蓮の部屋よりお送りします。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」
~中略~
・北条加蓮「カフェに1人で来た日の話」
・高森藍子「カフェで加蓮ちゃんを待つお話」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「ちょっと疲れた日のカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「春風のカフェテラスで」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:54:22.26 :NDIf1Rs60
加蓮「藍子……?」
藍子「……大丈夫ですか? ……なんて聞いちゃったら、加蓮ちゃん、怒りそうですよね。気を遣うな、なんて」
藍子「あっ、ごめんなさい。いきなり色々とお話しちゃったら、加蓮ちゃん、疲れちゃいますよね」
藍子「そのまま……そう、ゆっくり、横になっていてください。大丈夫ですから……」
加蓮「……ん……」ヨコニナル
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:54:52.64 :NDIf1Rs60
藍子「……そうだ。お水――」
加蓮「ううん、いい」
藍子「でも、」
加蓮「いらない……」
藍子「……分かりました」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:55:22.32 :NDIf1Rs60
加蓮「……花の匂いがする」
藍子「え?」
加蓮「ほんの少しだけ……。花の匂いがする。藍子からじゃなくて、すごく、微かにだけど……ゲホッ」
藍子「! 加蓮ちゃ――」
加蓮「ふふっ、大げさだよ……ちょっぴり、咳をしただけなのにさ」
藍子「でも、加蓮ちゃんこんなに苦しそうで顔も真っ赤で!」
加蓮「豆電球しかついてないのによく……ゲホッ、分かるね」
加蓮「そんなに私の顔ばっかり見て、面白い? あはっ、やっぱり藍子って変な子だ」
加蓮「いつだったかなー……。変じゃない、って、ムキになって言ってたよね。こう、ほっぺたをぷくーってして」プクー
加蓮「あれ、面白かったなぁ。どーでもいいことなのに、藍子がムキになってるのが、すっごく面白かった」
加蓮「もっと、ムキになるべき場所とか、他にいっぱいあるのに。モバP(以下「P」)さんから、からかわれた時とか……」
藍子「…………加蓮ちゃん……」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:55:52.57 :NDIf1Rs60
加蓮「……」
加蓮「……お花見、行ったんだね。ちゃんと」
藍子「っ……」
加蓮「ほんの少しだけ、心配したんだ……。約束を千切って押しかけてきたりしないか、なんて……」
藍子「……、……そんなの、加蓮ちゃんは望んでいませんよね」
加蓮「知ってるんだ」
藍子「知ってますよ……」
加蓮「……」
藍子「……」
藍子「……どうして――」
藍子「……」
加蓮「ん?」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:56:22.66 :NDIf1Rs60
藍子「…………、……ごめんなさい」
加蓮「何で謝るの?」
藍子「加蓮ちゃん、あんなに楽しみにしてたのに……私、加蓮ちゃんを、放ったらかしにしてしまって、私だけ……」
藍子「カフェで、色々な計画をお話したのに……」
藍子「未央ちゃん達と勝負することとか、ムービーを撮って、後で編集――」
加蓮「やめて!!」
藍子「っ……」
加蓮「……ごめん。…………でもやめて」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:56:52.44 :NDIf1Rs60
加蓮「なかったの。そんなことなんて、最初からなかったの」
加蓮「最初からなかった。花見の約束なんて何もしてない」
加蓮「楽しみにしてたことなんてない。予定なんてなかっケホッ……なかったの。スケジュール帳には何も書いてないし何もワクワクなんてしてない。何もないの。なかったの!!」
藍子「そんな……」
加蓮「……ゲホッ。……無いことの話なんて、やめてよ。痛くなるだけなんだから」
藍子「…………」
加蓮「あ。……ごめん。違……ケホッ……そういうつもりじゃなくて、その……」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:57:22.42 :NDIf1Rs60
加蓮「……トイレ行ってくる」
藍子「あ、」
加蓮「手伝わなくて大丈夫。1人で行けるから」
加蓮「……1人で行かせて」
藍子「……はい」
加蓮「よいしょ、っと……」ヨロッ
藍子「…………」
加蓮「あはは……。思ったより、体力……持ってかれてるなぁ。無理、しすぎちゃったのかな、最近……」ヨロヨロ
<バタン
藍子「……」
藍子「…………」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:57:52.49 :NDIf1Rs60
藍子(――私と加蓮ちゃんは、あのカフェで色々な言葉を重ねてきました)
藍子(楽しいことも辛いことも、言葉にできるって思っています)
藍子(例え傷ついてしまっても、それで終わることはない。傷は浅い方がいいに決まっているけれど、切り傷を避けて大切な物を失うよりは、ずっといいってこと、私も……きっと加蓮ちゃんも、知っています)
藍子(……なのに)
藍子(……言葉が、何も出てこない)
藍子(抱きしめてあげたいのに今の加蓮ちゃんには触れない)
藍子(触ったら何かが崩れてしまいそうで手を伸ばすこともできない)
藍子(それなら残っているのは言葉だけなのに。なのに……)
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:58:22.49 :NDIf1Rs60
藍子(……ふと、壁にかかったカレンダーが目に入りました)
藍子(今日の日付が、……ペンで、ぐしゃぐしゃに塗りつぶされていて、紙の端に、強く握りしめた跡がありました)
藍子(……)
藍子(……足音が、近づいてきまず)
藍子(着替えたばかりの服で目元を拭うのが、今の私にはせいいっぱいでした)
<バタン
加蓮「…………」
藍子「……」
藍子「……お帰りなさい、加蓮ちゃん」ニコッ
加蓮「……うん」ヨロヨロ
藍子「……」
加蓮「……」(ベッドに横になる)
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:58:52.40 :NDIf1Rs60
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「加蓮ちゃん……」
加蓮「……ん……」
藍子「カレンダー……」
藍子「……」
藍子「……私、おでこに乗せるタオルを濡らしてきます」
加蓮「だからそーいうの、」
藍子「濡らしてきます」
加蓮「……ん。分かった」
<バタン
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:59:22.60 :NDIf1Rs60
加蓮「ケホッ……ぅー、あたまいたい……」
加蓮(トイレに行くついでに顔を洗ってきた。目が覚めて、状況は把握できた)
加蓮(頭がめちゃくちゃに痛くて身体がギシギシ軋む。咳は、むしろ出した方が楽になれる。そんなに熱は出てないから、寝てれば治るタイプ)
加蓮(まあ、状況分析はそれとして。……つまり、「また」なのだ)
加蓮(……例えば、外部から持ちかけられてきた――)
加蓮「ゲホゲホッ!」
加蓮(オファーとかが、10%くらいの確率で、一方的になかったことになるのと同じように)
加蓮(確率的に「起こり得る」と知っていたことが起きた。それだけのことだ)
加蓮(だから……もう1度寝れば、文字通り「無かったこと」になるに、)
加蓮「ケホッ……。いたた……」
加蓮(違いない。手足の擦り傷が、そのうち治るのと同じように……何度も受けた傷は、放っておいても修復される)
加蓮(たった、それだけのこと)
加蓮(「なかった」と、言えること)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 17:59:52.47 :NDIf1Rs60
加蓮(……なのにこんなにも、)
加蓮「ゲホゴホッ!」
加蓮(気持ち悪いのは、身体のせいだけじゃない)
加蓮(目を瞑ってもう1度意識を落としてしまえば終わる話を、終わらせてはならない、と思うのは)
加蓮(……でも今は、ちょっと……私も、色々ぐしゃぐしゃなんだよね……)
加蓮(今は、何もしたくないな……)
<バタン
藍子「……」
加蓮「……濡れてるよ。袖のところ」
藍子「……」
加蓮「手も、冷たそう。どんだけ水を流したのよ」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:00:23.86 :NDIf1Rs60
藍子「……真っ暗なのに。よく見えますね」
加蓮「豆電球がついてるし。あと……ほら。暗いところにずっといたら、目が慣れるでしょ」
藍子「そうかもしれません。私、さっき階下に行った時びっくりしちゃいました。すごくまぶしくて」
加蓮「ね。よくあるよね、そーいうの」
藍子「階段で、少しだけよろけてしまって」
加蓮「そーいう時に限って、お母さんが見てたりして」
藍子「加蓮ちゃんのお母さんが、……」
加蓮「……何か余計なこと言ってた?」
藍子「…………」
加蓮「……藍子?」
藍子「……これ、タオル。どうぞ」
加蓮「ん。ありがと。……冷たっ」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:00:52.33 :NDIf1Rs60
藍子「……熱は」
加蓮「38度6分」
藍子「え」
加蓮「それか7分」
藍子「……分かるんですか?」
加蓮「慣れてるもん」
藍子「…………」
加蓮「何度も何度も起きたことだからね」
藍子「…………」
加蓮「体温計いらずの生活。ふふっ、便利でしょ?」
藍子「…………」
加蓮「そもそも、体温計なんて必要ないくらいがいいんだろうけど……」
藍子「…………」
加蓮「…………」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:01:22.43 :NDIf1Rs60
藍子「…………」
加蓮「…………」
藍子「……お薬。これ、加蓮ちゃんのお母さんからです」
加蓮「ん……」オキアガル
藍子「あ、そのままで……。ほら、口を開けてください」
加蓮「パス。それ失敗したら39度ルート入るから」
藍子「でも、」
加蓮「よいしょ、っと。……いたっ……。ほら、薬、貸して……」
藍子「……はい」
加蓮「ん」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:01:52.41 :NDIf1Rs60
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……ごめん。封、破いて」
藍子「……はい」ビリッ
加蓮「さんきゅ……」ゴクゴク
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:02:22.39 :NDIf1Rs60
加蓮「……ごめんね」
藍子「え?」
加蓮「約束、破っちゃって」
藍子「……!」
加蓮「約束なんてないって、私さっき言ったけど……なかったことにすればいいだけかもしれないけど、そんなの私の勝手な話だもん。藍子には関係ないよね」
藍子「関係無いなんてそんな……!」
加蓮「ううん。ちゃんと言わなきゃ。……よいしょ、っと」オキアガル
加蓮「約束、破ってごめん。一緒に行けなくてごめん」バッ
藍子「……」
藍子「……先に横になってください。加蓮ちゃんのお話……ちゃんと、聞きますから」
加蓮「甘えるね」ゴロン
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:02:52.52 :NDIf1Rs60
加蓮「ふうっ……。それと、心配させてごめんね。大丈夫……じゃないけど……こういうこと、よくあるから」
加蓮「ふふっ、ちょっと横になってるだけで治るんだよ? ホントホント」
加蓮「藍子だって風邪を引いたりしてもすぐ治るでしょ? ……あはっ。パッションアイドルは風邪なんて引かないか」
藍子「…………」
加蓮「……薬を飲んで、病院行って……いや、病院はやめとこう。せめて行くなら元気な時に行かないと」
加蓮「こんな姿、見せたくないもん。夢は……夢のまま、守ってあげなきゃ」
藍子「……も、もうっ。元気な時に病院に行って、しんどい時に病院に行かないなんて……へ、変ですよっ」
加蓮「やっぱり? あはは、私も変だ。藍子と同じで、変だ」
藍子「絶対加蓮ちゃんの方が変ですってば~」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:03:22.46 :NDIf1Rs60
加蓮「そうかなー? ……ケホッゴホッ!」
藍子「っ……大丈夫ですか?」サスサス
加蓮「へーきへーき。こら、そんなにじっと見ても何も出てこないよ……ってか顔近いし……」
藍子「……」
加蓮「病院は……うん。行かなくても、薬を飲んで寝れば治るんだしさ」
加蓮「だから、……そんなに泣きそうな顔しないの」
加蓮「心配して気を遣ってくれるのは、……その、素直に嬉しいけど、嫌だし、しんどいから」
藍子「……しんどい、ですか……?」
加蓮「うん。しんどい。だって気遣われたらすぐ治さないといけないって焦っちゃうから」
加蓮「そんな顔させたくないな、って思ったら、ざわざわしちゃうもんね」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:03:53.19 :NDIf1Rs60
加蓮「それに」
藍子「……それに?」
加蓮「すごく、嫌なことを思うから」
藍子「…………」
加蓮「……そんな顔なんて、させたくない」
加蓮「目を背けたくなって、でも、背けたらますます自分が嫌になっちゃうよ」
加蓮「そしたら……出会わなければよかった、って。考えちゃうから」
藍子「…………やめてください、そんな考え方……!」
加蓮「あははっ。じゃーさ、藍子もその顔はやめてよ」
藍子「それは――」
加蓮「ね? 難しいでしょ?」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:04:22.73 :NDIf1Rs60
加蓮「身体の弱い人がしんどそうにしてたら、普通の人が風邪を引いた時より心配になる。そんなの当たり前のこと」
加蓮「同じだよ。私にも、私なりの当たり前って物があるんだから」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……なら、せめて……謝るのは、やめてください」
加蓮「ん……」
藍子「ちゃんと言わなきゃ、って、さっき加蓮ちゃんは言いましたよね。……加蓮ちゃんは、はっきり言いました。ごめんなさい、って」
藍子「私は、…………分かりました、って、受け止めた……つもりですから」
藍子「だからもう、謝らないでください。謝ったら、もっとしんどくなってしまいます」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:04:52.64 :NDIf1Rs60
藍子「しんどくなってしまうのが加蓮ちゃんの当たり前なら、少しでも、傷をふさいでください」
藍子「加蓮ちゃんは、いつも通りのこと、よくあること、って言っちゃうかもしれませんけれど」
藍子「それこそ、」
藍子「……それこそ……」
加蓮「うん。続けて?」
藍子「…………」
藍子「……それこそ加蓮ちゃんの勝手なことです。私にとっては、当たり前でも何でもないんですから!」
加蓮「……うん」
藍子「…………っ」ボロボロ
加蓮「泣いてるし」
藍子「泣いてばぜんっ」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:05:22.90 :NDIf1Rs60
加蓮「泣いてる藍子の顔、しっかり見えるんだけど?」
藍子「加蓮ちゃんだって、さっきっ、トイレに行ったから、目がまだ暗い部屋に慣れてないんでずっ」
加蓮「はいはい」
藍子「ぐすっ……」
加蓮「…………」
藍子「…………」
加蓮「……38度3分」
藍子「え?」
加蓮「それくらいだと思う。たぶん」
藍子「……」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:05:52.59 :NDIf1Rs60
加蓮「藍子は知ってると思うけど、私、嘘をつくのは大嫌いだし気を遣うのも結構嫌いだからね?」
藍子「……加蓮ちゃんが言うなら、嘘じゃないんでしょうね」
加蓮「そう? それそのものが嘘かもしれないんだよ? 相変わらず騙されやすいんじゃないのー? ……ケホッ」
藍子「……」
加蓮「なーんてっ……」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:06:22.60 :NDIf1Rs60
加蓮「あーあ。花見、行きたかったなぁ……」
藍子「…………へ?」
加蓮「ん?」
藍子「だってさっき加蓮ちゃん、そんなのなかった、って」
加蓮「あーうん。いつもはね、こういうこと……こういうことって割とよくあるから、その度に「なかったこと」って思うようにしてるの」
加蓮「あれがやりたかった、これがやりたかった、って、いちいち言ってたらキリがないだろうし。諦めることだって大切でしょ?」
加蓮「でもさ――いたた……」(頭をおさえる)
藍子「! 加蓮ちゃんっ」
加蓮「たはは。私、かっこわるー」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:06:52.64 :NDIf1Rs60
加蓮「ほら、できないことをせがんでも周りの人は困るだけじゃん。お母さんもお父さんも。どうしようもないことを言われてもさ、困っちゃうだけでしょ?」
藍子「……でも――」
加蓮「でも?」
藍子「……なんでもないです」
加蓮「そう……」
加蓮「前に見たことあるんだよね。2人が泣いてたとこ」
加蓮「何もしてやれないんだ、って。すごく悔しそうで、悲しそうだったんだ」
加蓮「あれはちょっと……見たくなくてさ。どうすればいいかなーって思った時、あぁそっか、やりたかったことなんて無かったって思うようにすればいいや、って気付いて……気付いたっていうか見つけたっていうか」
藍子「……」
加蓮「でも……。んー……ほら、私の趣味って"藍子を困らせること"だからっ」
加蓮「今はいいかなー、なんて。……ダメ?」
藍子「……」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:07:22.65 :NDIf1Rs60
藍子「っ……」
藍子「……もうっ! そんな趣味、プロフィールに書いちゃダメですからね!」
加蓮「! ふふっ、どうしよっかなー? 今度インタビューで「オフの日は何をしてるの?」って聞かれたら、藍子を困らせてますって答えちゃおっかな?」
藍子「ダメですってば~。きっと、記者さんも困っちゃいますよ?」
加蓮「ないない。むしろ根掘り葉掘り聞いてくるに決まってる。そして面白おかしく記事になるんだ」
藍子「それ、私にまで被害が来ちゃうじゃないですかっ」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:07:52.70 :NDIf1Rs60
加蓮「逆に藍子にとってはいいことにならない? あれは加蓮ちゃんに困らされていることでウワサの藍子ちゃん! 優しくしてあげよう! ってならない?」
藍子「周りのスタッフさん、みんな優しいですから。加蓮ちゃんっぽく言うなら、余計な気遣いです!」
加蓮「そっか。ふふっ」
藍子「そうですよ、も~!」
加蓮「そっかそっかー。…………」
藍子「あははっ。加蓮ちゃんは、やっぱり加蓮ちゃんなんですから。…………」
加蓮「……」
藍子「……」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:08:22.71 :NDIf1Rs60
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……今日は……ケホッ、もう寝るね。薬も飲んだし、起きてるとお母さんがうるさそうだし」
藍子「……、……そうですね。それが、いいと思います」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:08:52.70 :NDIf1Rs60
加蓮「藍子は帰りなよ。感染っちゃうよ」
藍子「加蓮ちゃんが何を言っても絶対に嫌です」
加蓮「インタビューで変なことを答えるよー?」
藍子「どうぞ言ってください。帰りませんから」
加蓮「……そか」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:09:22.63 :NDIf1Rs60
加蓮「……おやすみ。……また、明日」
藍子「おやすみなさい。……また、明日。加蓮ちゃんが……少しでも、元気になっていますように……」
……。
…………。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:09:52.69 :NDIf1Rs60
加蓮(――藍子は何かを隠している)
加蓮(隠しているというより、我慢している。何かを抑え込んでいる)
加蓮(……傷ついても構わない関係。傷ついてでも一緒にいたいと思う相手)
加蓮(でもそれは、私がいつもの私である時のこと)
加蓮(ごめんね、藍子。私、自分が思っていたより傷ついていたみたい。だから、今は寝させてほしいな)
加蓮(その話は、――)
加蓮(……その、話は…………)
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:10:23.56 :NDIf1Rs60
藍子(いつも通りの冗談を言っている間、時々、意地悪な笑みが崩れそうになっていました)
藍子(しんどくなるのが当たり前のこと……って、言っていたけれど、それは違う)
藍子(嘘ではないと思います。加蓮ちゃん、嘘をつくのもつかれるのも大嫌いですから)
藍子(加蓮ちゃんが、自分のことに気付いていないだけ。それか、気付いているけれど、気付いていないフリをしているだけ)
藍子(このまま放っておいたら、気持ちに蓋をしてしまう)
藍子(……毒の棘は、飲み込んでもなくならない。広がった傷は、目を逸らしても塞がったりしない)
藍子(このままではいけない)
藍子(分かっているのに)
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:10:52.74 :NDIf1Rs60
――またいつか聞かせてね、の一言が、口から出ない
――傷ついて傷つけてでも手を伸ばせばよかった。……もっと、もうちょっとだけ
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/13(木) 18:11:22.67 :NDIf1Rs60
おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。
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【SS速報VIP】北条加蓮「……」高森藍子「……加蓮ちゃんと、桜の日の夜に」
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