そろそろ一年が終わりますね。私も今日で今年の分の仕事は終わりました。

年末年始は実家に戻るので事務所にいって挨拶しましょう。


「ただいま戻りました」

「おお、泰葉か。おかえり、待っていたよ」


くるり、白衣をなびかせながらこちらを向きます。

Pさんが外に出ているときはそこが彼女の特等席です。


「どうしたのですか晶葉ちゃん」


彼女は満面の笑みで私を迎えてくれました。そういえば前にもこんなことがあったな。


2 :◆foQczOBlAI :2015/12/31(木) 16:57:54.98 :30gh8i/A0

「これを見てくれ」

「あ、完成したんですね」


彼女が手に持っているロボには見覚えがあります。独楽回しロボです。

新年の仕事に使いたいといわれ、私も作成を手伝いました。

といっても、素人の私にロボの作成に関して出来ることなどなく独楽回しをしてみせただけなんですけどね。

それを色んな角度から撮影されました。今まで色々な撮影をこなしてきましたけれどこれは初めてで少し緊張しましたね。

余談ですがこのときに彼女が使ったカメラはテレビ局にあるようなカメラでした。

なんでも手に入れるのには苦労したみたいです。可愛くお願いしたとか何とか。それも上手くいかず色々掛け合ったとか。

よく手に入りましたよね……。

それから試作機を何台も作り試行錯誤を繰り返していました。

私が言うのもなんですけど晶葉ちゃんはすごいですよ。

私も茄子さんの指導のもと何回も何回も練習してやっとできましたから。

ましてやそれはロボにさせるなんて簡単なことじゃありません。私はそう思います。

ついに完成したんだね。晶葉ちゃんの頑張りを見てきたので自分のことのように嬉しいです。


3 :◆foQczOBlAI :2015/12/31(木) 17:00:51.20 :30gh8i/A0

「いや、まだ完成はしてないんだ。そこで泰葉にお願いがある」

「なにをすればいいんですか」

「そんな身構えなくていい、簡単なことだ。このネジ、代わりに回してくれ」

「それだけでいいんですか。それは最後のネジですよね、私がやっていいんですか」

「ああ、それだけだ。これは泰葉にこそやって欲しいんだ」

「うん、じゃあやらせてもらいます」

「頼むよ。はい、ドライバーだ」

「ありがとう。でも何で私に頼んだのですか」

「それはだな……」


晶葉ちゃんは少し顔を赤くして教えてくれました。


「父親の口癖が関係しているんだ。ロボはネジの一本でも書けたら正常に動作しない。

 最後のネジを回したらロボは完成するといつも言っていてな。よく最後の一本を私に回させてくれたんだ。
 
 だから私の作ったロボもそのロボの作成にお世話になった人に最後のネジを回してもらっているんだ。

 一緒にロボを作ったって事を共有して欲しいから」


4 :◆foQczOBlAI :2015/12/31(木) 17:01:53.85 :30gh8i/A0

そう言って晶葉ちゃんは私から目を逸らして頬を軽く掻きました。

もう顔は少しどころではなく真っ赤です。こういうところは年相応なんだよね。可愛いな。

晶葉ちゃんの話を聞いて、私のドライバーをもつ手にも力が入ります。

晶葉ちゃんと一緒に作ったロボ、心を込めてネジを回します。


「よいしょ、出来ましたよ」

「ありがとう。これで完成だ」

「お疲れ様」

「泰葉こそ。仕事終わりに頼んでしまって悪かった」

「いいんですよこんぐらい。それよりなんか飲みますか、ココアでもいれましょうか」

「うむ、作業していて少し疲れたな。お願いしてもいいかな」

「もちろん、少し待っててください」


5 :◆foQczOBlAI :2015/12/31(木) 17:02:30.31 :30gh8i/A0

晶葉ちゃんはやっぱり凄いな。せめてココアでもいれてねぎらってあげないと。

ココアを持っていくと晶葉ちゃんはPさんの椅子からテーブルのあるソファに移動していました。


「泰葉、せっかくだし少し話さないか、今年会えるのも最後なのだろう」

「はい。私も話したいと思っていました」


隣り合うようにしてソファに座ります。一つのココアを晶葉ちゃんの前に、もう一つを自分の前に。

あ、そうだ。熱いから気をつけるよう「熱い!」……遅かったみたいですね。


「大丈夫ですか」

「ああ、平気だ」


若干涙目です。晶葉ちゃんは猫舌みたいですね。今度から気をつけるように言わないと。

それから晶葉ちゃんは何にもなかったようにして座りました。


6 :◆foQczOBlAI :2015/12/31(木) 17:03:38.72 :30gh8i/A0

「今年も色々ありましたね」

「そうだな」

「私の最初の仕事はかくし芸でしたね」

「えっと、独楽回しと頭でピザキャッチだったかな」

「後者は違います……」

「そうだったのか。ならあのロボに頭でピザキャッチする機能を付けなくてもよかったな」

「そんな機能をつけていたんですか?」

「冗談だ」

「……もう晶葉ちゃんなんて知りません」

「すまない。少しからからかっただけだ」

「そういうところPさんに似てきましたよね」

「そうだったのか……無自覚だった」

「次は晶葉ちゃんのお嬢様チャレンジでしたよね」

「あの挑戦で私はより成長できた」

「ピアノ上手でしたよ」

「そうだろう、天才に不可能はないんだ」


7 :◆foQczOBlAI :2015/12/31(木) 17:04:32.87 :30gh8i/A0

「その次は晶葉ちゃんのファッションショーでしたよね」

「あれもいい経験になったな」

「かわいかったですよ」

「直接言われると照れるな……」

「晶葉ちゃん可愛い。いつもと違う髪形可愛かったし慣れない服装に最初は戸惑っていたけれど徐々に自身をつけてウィンクでポーズしているの可愛い。へそだし肩だしファッションも可愛かったですね」

「な、なんなんだ急に……」

「さっきのお返しです。でも可愛かったのは本当ですよ」

「う、うん……ありがとう……」

「真っ赤ですね」

「つ、次だ次。泰葉のスポーツグラビアだよな」

「はい、楽しかったです」

「アレを堂々とやれるのはすごいってPとトレーナーが褒めてたぞ」

「あれ?言葉にとげがありませんか?」

「気のせいだろう。まあ、新しいことに挑戦するのは楽しいよな」

「そうですね。来年もたくさん挑戦していきたいです」


8 :◆foQczOBlAI :2015/12/31(木) 17:05:52.72 :30gh8i/A0

「そして最後は……泰葉のソロライブだな」

「はい、忙しかったけれど楽しかったです」

「すごく……すごくよかった。感動した。……ダメだな、私の語彙じゃ表現することが出来ない。今度頼子に習うかな」

「いえ、伝わりましたよ、晶葉ちゃんの気持ち。
 
 多分私自身もあのライブを言葉では表現できません。

 キラキラ輝いて、夢が叶って。

 いや、Pさんやファンの皆さん。アイドルのみんな、もちろん晶葉ちゃんも含めて。

 そんな人々に支えられて、みんなで一緒に夢を叶えました」

「もう一度、いいライブだった」

「ありがとうございます」

「今年は充実した一年だったな」

「私もです」

「来年はもっといい年にしよう」

「頑張りましょう」


9 :◆foQczOBlAI :2015/12/31(木) 17:06:29.75 :30gh8i/A0

ガチャリ、ドアが開いた音がします。ちひろさんが帰ってきたのでしょう。


「ごめんね晶葉ちゃん、遅くなっちゃって」

「いや、泰葉がいたから平気だった」

「泰葉ちゃんもお帰り」

「はい、ただいま」

「それじゃ私はそろそろ帰るとするよ」

「私もやることがあるので帰ります」

「はい、今年一年お疲れ様。よいお年を」

「うむ、今年もお世話になったな。来年もよろしく頼むぞ」

「今年もありがとうございました。よいお年を」


それぞれ挨拶をして帰路につきます。

さて、実家に戻る準備しないと。帰ってもやることあるぞ。


10 :◆foQczOBlAI :2015/12/31(木) 17:09:59.19 :K6wJBgn90





ああ、今年はいい一年だったな。

       来年もいい一年になりますように。



11 :◆foQczOBlAI :2015/12/31(木) 17:10:48.31 :K6wJBgn90

以上で短いけど終わりです。


来年も池袋晶葉と岡崎泰葉をよろしくお願いします。


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【SS速報VIP】晶葉「機械に生を与える」泰葉「そんな年末」
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