モバP(※以下P表記)「あぁ、奈緒にウェディングドレスを着てもらう仕事だ」

奈緒「は、はァ!?な、何であたしがウェディングドレス着るんだよ!」

P「興味があるのか。よし説明しよう」

奈緒「待てってPさん!そんなこと言ってないだろ!」


2 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 21:30:53.91 :2XR7LXfF0

P「今は5月。来月6月といえばジューンブライドだな」

P「そんなわけで、結婚雑誌の方からお仕事の依頼が入った」

P「そこで、スケジュールのちょうど良かった奈緒に白羽の矢を立てた」

P「説明は以上だ。何か質問は?」

奈緒「あるよ!あたし以外にスケジュールの空いてるのはいないのか!?」

P「さぁ。確認してない」

奈緒「それがプロデューサーの言うことかよ!?」

P「おう」

奈緒「開き直らないでくれよ!あぁもう!」

P「嘘だよ、嘘嘘。本当はちゃんと確認した上で、奈緒にやってもらいたいと思ったからだ」

奈緒「嘘かよっ!……もう、からかわないでくれよPさん」


3 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 21:32:24.22 :2XR7LXfF0

P「そんなに嫌か?」

奈緒「いや、そのっ。べべべ別にっ、着たくないと思ってるわけじゃないからな!?それは本当だからな!?」

P「じゃあいいじゃん。やろう」

奈緒「話は最後まで聞いてくれっ」

奈緒「……そ、そのさ。あ、あたしがウェディングドレスなんて、着てもいいのかなって…」

P「オッケーオッケー全然かまわんよ。むしろ着ちゃいけない理由がナッシングだ」

P「それに奈緒、この前の智絵里と蘭子の撮影の時、すごく羨ましそうに見てたじゃん」

奈緒「き、気付かれてたっ!?」

P「あんだけ羨ましそうに見てれば、気付かないやつの方が少ないと思うぞ」

奈緒「いやでも……。流石に人の前で着て、それを撮影されるっていうのはさぁ……」


4 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 21:33:22.41 :2XR7LXfF0

加蓮「おはよー、奈緒、プロデューサー」ガチャ

凛「おはよう、二人とも」

P「あ、二人ともちょうどいいとこに来た」

凛・加蓮「「?」」

P「ちょっと、かくかくしかじかでな」


5 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 21:35:17.78 :2XR7LXfF0

加蓮「ウェディングドレスでの撮影か……。懐かしいな」

凛「へぇ、奈緒にもその仕事が来たんだ。あとは私だけだね」

奈緒「おい!加蓮はともかく凛!あたしが引き受けるのは確実みたいに言うな!」

奈緒「というかPさん!なんでこの二人に話しちゃうんだよ!」

P「退路を確実に断っておこうと思って」

奈緒「何で……、何でこうなるんだ……」


6 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 21:36:37.36 :2XR7LXfF0

凛「プロデューサー。それ、どういうシチュエーションでの撮影なの?」

加蓮「私も気になるなー」

P「えーっと、向こうの提示してきたシチュエーションは二つ」

奈緒「ちょ、ちょっと待てって!それ、あたしより先に聞くなよ!」

加蓮「えー?だってこのままの様子じゃ奈緒、話聞くまでにどれだけかかるの?」

奈緒「うっ」

P「はい。そういうことなんで続けるなー」

P「まず前提として、『結婚とその後の新婚生活』が撮影テーマになってる」

P「それで、まず一枚目に『仕事から帰ってきた夫を出迎える料理途中の妻』」

P「そして二枚目が『結婚式での幸せそうな花嫁姿』。順番が逆だが、とにかくそうらしい」

加蓮「へぇ、順序を入れ替えて掲載されるんだ。面白いね」


7 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 21:38:08.71 :2XR7LXfF0

P「ああ。そんなわけなんだが、奈緒」

奈緒「えっ、えぇっ……」

凛「ちなみにそれ、奈緒が断ったらどうするの?」

P「そうだなー……」パラパラ

P「あ、凛。凛もその日ちょうど空いてる」

凛「私?……うーん、悪くないけど、さっきのシチュエーションなら私より奈緒の方が似合うと思うな」


8 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 21:40:17.73 :2XR7LXfF0

P「だってさ奈緒」

奈緒「う、うわあああああああ!あたしはどうすればいいんだよ!」

加蓮「仕事、引き受ければいいだけじゃないの?」

P「おう、とりあえず『はい』っつっときゃ悩まなくて済むぞ」

凛「奈緒、素直になりなよ」 ナオチャンガスナオニ…フフッ

奈緒「う、うぅ……」

加蓮「ウェディングドレス、着てみたいんでしょ?」

奈緒「うぅぅぅぅ……」

P「なら、着てみよう?な?」


9 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 21:41:50.33 :2XR7LXfF0

奈緒「……タ」

P「ん?何?」

奈緒「……ワ、ワカッタ……。ソノシゴト、ヤル……」

P「お、やってくれるか。よかったよかった。じゃあそういうことで」

P「別に今からそんなに顔真っ赤にしなくてもいいのに」

奈緒「だ、誰のせいだと思ってるんだよっ!?」

凛「決断が遅かった奈緒の自業自得じゃない?」

加蓮「私もそう思うな」

奈緒「うわああああああ……」


10 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 21:47:03.72 :2XR7LXfF0

――― 数日後 ―――

P「本日はよろしくお願いします」

奈緒「神谷奈緒です、よろしくお願いします……」

カメラマン「あい、よろしくー」

カメラマン「それじゃ早速だけど、着替えて準備してもらっていいかな」

奈緒「はい、わかりました……」トボトボ

カメラマン「…なんかあったんすか彼女」

P「いえ、引き受けたことを後悔してるだけです。準備できれば覚悟決まりますよ」

カメラマン「あー、そっすか。了解でーっす」


11 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 21:51:26.95 :2XR7LXfF0

キザイジュンビオネガイシマース ワカリマシター

加蓮「奈緒も、もう少し笑顔で仕事に臨めないのかな」

P「お前たちが同行してるのも、間違いなく原因の一つだけどな」

凛「奈緒も自分でOKしちゃった以上、ドタキャンするわけにはいかないからね」

凛「たとえそこに私たちがいても」

P「お前たちは本当に奈緒が好きだなぁ」

プロデューサーサーン、カミヤサンガヨンデマスー

P「お?何かあったかな?ちょっと見てくる」


12 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 21:57:27.50 :2XR7LXfF0

P「奈緒ー?入っていいかー?」

奈緒『は、入らないでくれPさん!』

P「どうした奈緒?」

奈緒『いやっ、そ、その……』


13 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:04:43.16 :2XR7LXfF0

カミヤサンハイリマース アーイリョウカイデース

凛「奈緒が入るみたいだね」

加蓮「どんな格好になるのかな」

凛「スマホの充電は…。うん、大丈夫」

加蓮「あ、プロデューサーお帰り。何かあった?」

P「なんか衣装について聞かれた」

P「『これPさんが選んだんじゃないよな!?』って、それはもうしつこく何度も」

凛「ふーん。どんな衣装なの?」

P「見りゃわかる。あ、来たぞ」


14 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:10:43.98 :2XR7LXfF0

カメラマン「あーいそれじゃ神谷さん、よろしくお願いしまーす」

奈緒「よ、よろしくお願いします!」


加蓮「…………」プルプル

凛「フッ、フフフフッ……」

加蓮「か、可愛い……ッフフ」

凛「あのエプロン、ッフフッ、すごい、フリルがフフフフ」

加蓮「し、しかも見てよあれ…ッフ。う、上半分が、ハ、ハートになってるフフフフ」

P「笑ってやるな二人とも。奈緒も頑張ってんだから」

加蓮「プロデューサー、そういうことは口を覆ってる手をどかしてから言ってね」

凛「フフフフフ……。はぁー……」


15 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:15:47.43 :2XR7LXfF0

加蓮「それで、結局あのエプロンを選んだのはプロデューサーなの?」

P「イグザクトリー。普通のエプロンより、なんかフリルのついた可愛らしいやつの方が、いかにも『結婚ホヤホヤの新妻感』出てるだろ?」

凛「本音は?」

P「奈緒にああいうの着せてみたかった」

加蓮「素直だね」

P「俺は奈緒じゃないからな」


16 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:22:39.07 :2XR7LXfF0

カメラマン「んー神谷さん、悪くはないんだけどちょーっと物足りないかな」

カメラマン「なんか、身近な異性を旦那さんだと思ってやってみてくれるかな」

奈緒「わ、分かりました」

奈緒(身近な異性ってそれ……、ほとんどPさんのことじゃん!)

奈緒(でもっ、この場を乗り切るのに必要なら仕方ない……!)

奈緒(もし、もしPさんがあたしの、だ、旦那さんだったら……)


17 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:29:40.39 :2XR7LXfF0

凛「何かアドバイスされてから、奈緒の表情が前より良くなったね」

加蓮「恥ずかしそうな表情が特にね」

P「たまんねぇなぁ……。滅茶苦茶そそられるわ」

凛「……聞こえなかったことにしとくよ、プロデューサー」

加蓮「担当アイドルに向けて言っていいことじゃないよね、今の」


18 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:33:47.71 :2XR7LXfF0

カメラマン「おっ、今の表情最高!いいの撮れたよー」

P「今の恥じらった表情を逃さないとは……。あのカメラマン、出来るッ」

P「今の表情からは『仕事から帰ってきた夫を出迎えるが、その際〈あなた〉と呼ぶべきか名前で呼ぶべきかで迷い、結局恥ずかしくなってどちらとも呼べない新妻の一瞬』を感じ取った」

凛「……プロデューサー、もうその辺で」

加蓮「私たち以上に、付いて来ちゃいけなかった人なんじゃないかな……」

イッタンキュウケイデース セットコウカンシテー

凛「これで一枚目の写真撮影は終了だね。そうすると次は」

P「いよいよお待ちかねのウェディングドレスのお披露目だ」


19 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:38:37.36 :2XR7LXfF0

P「いやぁ本当に苦労した。この瞬間のために、いつこの仕事が来てもいいように奈緒のスケジュールを調整して、空きを作っておいた甲斐があった」

加蓮「……その情熱、本当にどうなってるの?」

凛「プロデューサーやってなきゃ、ストーカ-になってたんじゃない?」

P「何とでも言え」

凛「自覚はあるんだね」


20 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:41:22.83 :2XR7LXfF0

――― 数十分後 ―――

カミヤサンジュンビデキマシター コッチモオッケーデース ハーイカミヤサンハイリマース

P「…………ッ!!」

凛「うわっ、急に目開かれるとびっくりするんだけど」

加蓮「……プロデューサー、その集中力はどこから来るの?」

P「奈緒のこととあらば、どこからでも」

P「それよりしばらく話しかけないでくれ。奈緒の姿を脳に刻むことだけに、神経を総動員するから」

凛「わかった、プロデューサー。……加蓮」

加蓮「うん、プロデューサーのことは放っておこう。私たちも」

凛「奈緒の写真、撮らないとね」スッ


21 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:45:27.62 :2XR7LXfF0

カメラマン「んじゃ神谷さん、もっかいよろしくお願いしますー」

奈緒「は、はい!よろしくお願いします!」

カメラマン「さっきのアドバイス、まだ覚えてる?」

奈緒「み、身近な男性を、そのっ、だ、旦那さんだと、思えって」

カメラマン「んじゃ、今度もそれでいこっか。あーい笑ってー」



P「…………」ジィィィィィ

凛「……今のプロデューサー、やってるのは褒められるようなことじゃないのに、何かそういうのも超えて、ただ凄いって思えてきた」

加蓮「人間の能力の限界に挑んでるようなものだから……」

凛「こんなところで、あんな理由で限界に挑むような人だとは思わなかったけどね」


22 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:47:53.40 :2XR7LXfF0

カメラマン(うーん、いい表情が出ない。でもさっきのは良かったし…、恥ずかしがりなのか)

カメラマン(そうしたら……)

カメラマン(彼女の一番身近な異性…、となるとあのプロデューサーか)

カメラマン(想像で駄目なら、実物に頼るか)

カメラマン「すいません神谷さん、一旦ストップしまーす」

奈緒「あっ、はい。わかりました」

奈緒(あぁーもう、結婚する時の表情なんてわかんないって!)

奈緒(しかも、その相手役がPさんじゃ…。どんな顔すればいいのか余計に…)


23 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:49:43.38 :2XR7LXfF0

加蓮「あれ、プロデューサー。撮影止まったけど」

P「……なんだ?何かあったのか?」

凛「プロデューサー、顔険しすぎ。小学生の子達が見たら泣くよ?」

加蓮「こんなことしてるの知った時点で泣きそうだけどね」

凛「本当にね。あれ、カメラマンさんがこっち来るよ」

カメラマン「プロデューサーさん、ちょっといいっすか」

P「どうかしましたか?」

加蓮「うわ、一瞬でまともになった」

凛「仕事に私情を持ち込んでも、他人の前では器用に隠せるんだね」


24 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:54:00.83 :2XR7LXfF0

カメラマン「かくかくしかじか、というわけでして」

カメラマン「写真に入らない位置までプロデューサーさんに近づいていただいて、それで写真を撮ろうかな、と思いまして」

P「わかりました、やりましょう」

カメラマン「大丈夫っすか。あざーっす」

凛「今のプロデューサーの事情を知らないと、撮影を進めるために快諾したように見えるけどさ」

加蓮「うん。より近くで奈緒を見ることに集中したいからだよね」

凛「ぶれないね」

加蓮「もう少しぶれてもらった方が安心できるんだけどね」


25 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 22:57:06.81 :2XR7LXfF0

奈緒(カメラマンさん、話は済んだのか……って)

奈緒「な、なんでPさんがこっちに来るんだよ!?」

P「かくかくしかじか」

奈緒「うっ……」

カメラマン「そんなわけで、ここにいるプロデューサーさんを新郎役だと思ってください」

P「奈緒、頑張れ」グッ

奈緒「そんな無責任なこと言うなよPさん!」

奈緒「り、凛!加蓮!二人からも何とか……!」

凛「……」ニヤニヤ

加蓮「……」ニヤニヤ

奈緒(や、やっぱりあの二人もダメかーっ!)


26 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:00:22.43 :2XR7LXfF0

P「奈緒。俺も協力するから、一回集中していいの撮ってもらおう。な」

奈緒「~~~~っ」

P「覚悟しよう。な?奈緒」

奈緒「……わ、分かった。……そ、その、Pさん!」

P「ん?」

奈緒「絶対、絶対に変なことしないでくれよ!笑わせたりとか、そういうのいいから!」

P「やれっていうフリ?」

奈緒「フリじゃない!」


27 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:03:01.32 :2XR7LXfF0

カメラマン「……そろそろ始めたいんすけど」

P「よし奈緒。少しはリラックスできたか」

奈緒「えっ、あ、あぁうん」

P「じゃあ俺ここにいるから。さぁ俺を新郎だと思ってやってみろ」

奈緒「お、おう……」



加蓮「なんかいい感じになってるけどさ」

凛「さっきのやつ、いい方向に持ってったけど、絶対普通にいじってただけだよね」

加蓮「それに気付かない奈緒も奈緒だし、押し通すプロデューサーもプロデューサーだし」

凛「なんなんだろうね、本当」


28 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:08:16.49 :2XR7LXfF0

奈緒(Pさんが、新郎役……)

奈緒(Pさんと、け、結婚……)

奈緒(ちょっとだけ、嬉しい、かな)

カメラマン「お、いい表情出てきたよー。笑顔笑顔ー」

奈緒(結婚、か)

奈緒(あたしも後10年もしたら、結婚とかしてるのかな)

奈緒(そうしたら、その相手は……)


29 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:09:43.64 :2XR7LXfF0

カメラマン「んー、だいぶ良くなってきたけど、もうひと押しなんか足りないなー」

奈緒「んー、どうしたら……」

P「……よし、奈緒」

奈緒「なんだ、Pさん」

P「俺が後ろを向こう。奈緒の顔を見ずに、ただここに立ってる」

P「もし仮に、俺が見ていることがほんの少しでも気ががりなら」

P「俺のことを気にせず、一番いい表情をカメラにだけ向けてくれ」

奈緒「Pさん……」


30 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:10:49.95 :2XR7LXfF0

加蓮「あ、プロデューサーがこっち向いた」

加蓮「しかも目まで閉じてる。どういうことだろ」

凛「……さっきまで、あんなに必死に奈緒の姿を頭に刻み込もうとしてたプロデューサーが、奈緒から目を離した」

凛「しかも、絶対見ることができないように後ろを向いて目を閉じた」

加蓮「……奈緒のために、自分の欲望をコントロールしたんだね」

凛「多分、プロデューサー的には相当悩んで苦しんで出した結論なんじゃないかな」

加蓮「全然いいことじゃないけどね。むしろ最初からやってあげててっていう」

凛「ていうかさ、加蓮」

加蓮「何?」

凛「もう奈緒、私たちのこと眼中にないよね」

加蓮「そうだね。ちょっと悔しいから、撮っといた写真後でみんなに送ろっか」


31 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:12:48.42 :2XR7LXfF0

奈緒「Pさん、別にこっち向いてても」

P「いや、これは奈緒のためだ。思う存分やってくれ」

P「俺は絶対にそっちを見ない」

カメラマン「撮影続行してもいいっすか神谷さん」

奈緒「すいません、ちょっと待ってもらってもいいですか」

カメラマン「……はぁ、了解っす。準備出来たら言ってください」


32 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:15:05.55 :2XR7LXfF0

奈緒(あたしが結婚する時は……)

奈緒(その時は、もう少し素直になれてるのかな)

奈緒(そうだったら、そんな時に、あたしはどんな顔してるのかな)

奈緒(……素直な気持ちで、幸せって笑顔でいたい)

奈緒(それで、隣にいてほしいのは……)



奈緒「もう、大丈夫です。お願いします」

カメラマン「…オッケー。それじゃ、撮るよ」


33 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:17:03.75 :2XR7LXfF0

カメラマン「うん、いいね。最高にいい写真が撮れた」

P「……終わりました?」

カメラマン「えぇ、バッチリっす」

P「見せていただいても?」

カメラマン「あい、ちょっと待ってくださいねー……。これっす、どうぞ」

P「…………」


35 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:19:30.73 :2XR7LXfF0

奈緒「ぴ、Pさん……。終わったから、着替えてもいいよな……?」

P「…………」ワナワナ

奈緒「ど、どうしたんだよPさん…?」

P「…………奈緒」

奈緒「な、何だよ」

P「結婚しよう」

奈緒「は?」

P「だから、結婚しよう。奈緒」


36 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:22:00.63 :2XR7LXfF0

奈緒「え……、えぇぇぇぇぇぇっ!?」

奈緒「なっ、ななななななに言って……!」

奈緒「じょっ、冗談ならよせよ!?か、からかうのもナシだからなっ!?」

P「冗談でもからかってるわけでもない。俺は本気だ」

奈緒(や、やばい。やばいっ!Pさんの目、本気だ!)

奈緒「凛、加蓮!助けてくれ!……いや助けろ!」

凛「加蓮、何か聞こえた?」カシャカシャ

加蓮「いや、なんか奈緒の声が聞こえたような気がするけど、多分気のせい」カシャカシャ

奈緒「あぁっ、あの二人に頼れるわけなかった!カ、カメラマンさん!」

カメラマン「写真OKなんでチェックお願いしまーす」

奈緒「待ってください!行かないで!誰か!」


37 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:23:40.06 :2XR7LXfF0

P「どうした奈緒?何か問題か?」

奈緒「いやっ、その、あのっ」

奈緒「…っそう!あたしまだ、結婚を考えられる歳じゃないからさ!」

P「17だろ?もう結婚できる歳じゃないか」

奈緒「ち、違う!そういうことじゃない!その……」

奈緒「と、とにかく早い!早すぎるから!」

P「えぇぇぇぇ…………」

奈緒「な、何でそんなに落ち込んでるんだっ!?」

P「だって、ダメなんだろ?奈緒は俺のこと嫌いなんだろ?」

奈緒(こ、こんなに面倒くさい人だったかPさんって!?)


38 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:25:32.56 :2XR7LXfF0

奈緒「べ、別に嫌いとは言ってない―」

P「よし、じゃあ結婚しよう」

P「大丈夫、誰かから週一で送られてくる婚姻届もあるから」

奈緒「何が大丈夫なんだよ!?っていうか、婚姻届けが送られてくるってどういうことだよ!?」

P「俺にもわからないが、不気味だからとりあえず届いたそばから和久井さんにあげてる」

P「でもまさか、あの婚姻届けが役に立つときが来るとは……」

P「さぁ奈緒。大丈夫安心しろって、幸せにするから」

奈緒「こんな時に言われても嬉しくない!」

P「あ、今じゃダメか?なら事務所に戻ってからでも……」

奈緒「だからそういうんじゃないって言ってるだろぉぉぉぉっ!」


39 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:29:29.95 :2XR7LXfF0

加蓮「ふぅ、いい写真が撮れたんじゃないかな」

凛「あとでみんなに見せてあげなきゃね」

加蓮「……ねぇ凛」

凛「何?加蓮」

加蓮「さっきプロデューサーが言ってたことだけどさ」

凛「奈緒へのプロポーズ?」

加蓮「そっちじゃなくて。婚姻届けのこと」

凛「あぁ、和久井さんにあげてるって言ってたあれ」

加蓮「それ多分、和久井さんが送ってるんじゃないかな」

凛「……自分が送ってる物を、返される和久井さん」


40 :◆7ALWpexvKs :2015/06/10(水) 23:31:04.36 :2XR7LXfF0

加蓮「……そのプロデューサーは『あれ』だし」



P「今じゃダメなら、何歳ならいい?俺はいつでもOKだぞ」

奈緒「わぁーっ!聞こえない!あたしは何も聞いてないぞ!」



凛「はぁー……」

加蓮・凛「「さっさと結婚すればいいのに」」



お終い


44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/11(木) 10:41:21.11 :LPrXUmd80
この後三重士による三連婚姻届けコンボが
Pに襲いかかるとは、誰も予想出来なかった…


SS速報VIPに投稿されたスレッドの紹介です
【SS速報VIP】奈緒「ウェディングドレスを着る仕事?」
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