1:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:50:47.43 :kBxxtr88o

※アイドルマスターシンデレラガールズのSSです


2:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:52:04.95 :kBxxtr88o

――――――――――――一時間前、事務所 


拓海「これか……Pの野郎が言ってた荷物は?」 


涼「そうだね。さすがに一人じゃ無理だからな。二人でさっさと運んで終わらせようぜ」 


拓海「よっと……意外に重いな。おい、涼! しっかり気合入れて持てよ!」 

涼「わかってるって。うっさいなあ」 

拓海「重てえなあ……何が入ってんだ?」 

涼「前のイベントで使った小道具やら衣装とかだな」 

拓海「これ、どこに運べばいいんだ?」 

涼「アンタ、何も聞いてねえな……地下の倉庫だよ」 

拓海「へえ、この事務所、地下に倉庫なんかあんのか」 

涼「おしゃべりはいいから、しっかり持てって! 早く終わらせたいんだからさ」 

拓海「何焦ってんだよ?」 

涼「この後、亜里沙さんの手伝いしなきゃなんないんだよ」 

拓海「また、チビどもの面倒見かよ。お前子供の扱い慣れてるよな」 

涼「そうでもないよ。結構大変なんだぞ」 

拓海「経験者みたいな口ぶりだな。お前……まさか、もう産んでんじゃねえの?」 

涼「そんなワケあるかッ!!」 

拓海「冗談だよ、マジになんなって」


3:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:52:47.11 :kBxxtr88o

――――――――――――地下倉庫 


涼「このへんでいいかな?……ゆっくり下ろせよ」 

拓海「わーってるよっと……ふぅ」 

涼「よし、戻るか」 

拓海「なあ?」 

涼「なに?」 

拓海「この扉は何だ?」 

涼「ああ、それはラボへの入り口だ」 

拓海「ラボ?」 

涼「晶葉が使ってる研究所みたいなもんだ」 

拓海「研究所ねえ……つーことは今、ここに晶葉がいんのか?」 

涼「あー、多分いるだろう。昨日、なんかやってしまわなきゃいけない発明があるとかで」 

拓海「お勉強できる奴の考えることはわかんねえな……なあ」 

涼「なんだよ? 早く戻ろうぜ、まだ荷物あんだし」 

拓海「ちょっと、覗いてみねえか?」 

涼「はあ? やめときなよ。勝手に入るとさすがのアイツも怒るぞ」 

拓海「いいじゃねえか。それにアイツだけ手伝わねえのもおかしいだろ?」 

涼「そう言ってサボりたいだけだろ?」 

拓海「カタイこと言うなって。見学だよ、見学」 

涼「ったく……」


4:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:53:53.11 :kBxxtr88o

――――――――――――研究室 


こんこん 


涼「おーい。晶葉ー? いないのかー?」 

拓海「邪魔するぜ」 

涼「あ、おい! 無断で入るなよ」 

拓海「気にすんなって。ここも事務所の一部みたいなもんだろ?」 

涼「あとで文句言われても知らねーからな」 

拓海「おわー……なんだか訳の分かんねー機械ばっかだな」 

涼「勝手に触んないほうがいいよ。あの子、そういうのは厳しいからね」 

拓海「わーってるって」 

涼「でも、晶葉どこだろ? 奥で寝てるのかな? アタシちょっと見てくるわ」 

拓海「おう」 


ことっ 


拓海「ん? 何だこりゃ? 飴玉??」


5:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:54:26.18 :kBxxtr88o

涼「ダメだねー、いないみたいだね」 

拓海「そっか」モゴモゴ 

涼「ん? アンタ、何食ってんの?」 

拓海「ああ、飴玉。そこにあったんでな」 

涼「勝手に食うなよ。晶葉にキレられても知らねえぞ」 

拓海「ははは、そんな飴玉一つで大げさな」 


がしゃん 


涼「ん?」


6:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:55:15.65 :kBxxtr88o

晶葉「…………」フルフル 


拓海「いよっ! 晶葉、邪魔してるぜ」 

晶葉「拓海……君は……一体何を……食べて……」 

涼「あ、晶葉……こ、これはな……」 

晶葉「拓海! 今すぐ吐き出せっ!!」 

拓海「あ?」 

晶葉「ちっ! 涼、首の後を叩くんだ!」 

涼「へ? あ、ああ」 


ずびしっ 


拓海「おうっ!!」 


ぽろっ 


涼「飴玉吐き出したぞ」


7:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:55:51.98 :kBxxtr88o

晶葉「間に合ってくれたか……拓海はこの飴をどれぐらい舐めていた?」 

涼「うーん……2,3分位だと思うけど」 

晶葉「そうか……だとしたら、5000日弱といったところか?」 

涼「?? どういう意味だ?」 

晶葉「……拓海を見てみるといい」 

涼「?……あれ? 拓海どこ行った?」 

晶葉「……君の足元だ」 

涼「えっ?」 



拓海「……」 



涼「拓海が……小さくなってる!!」


8:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:56:49.07 :kBxxtr88o

涼「お、おいっ! 大丈夫か?」 

拓海「……」 

晶葉「大丈夫だ。気を失っているだけだろう」 

涼「そ、そうか……」 

晶葉「それよりも服が合わなくなっている。悪いが倉庫から服を取ってきてくれないか? 千佳の使っていない私服があったはずだ」 

涼「わかった……晶葉は?」 

晶葉「私は今のうちに拓海の脳波を調べてみる。万が一がないとも言えん」


9:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:57:31.93 :kBxxtr88o

涼「取ってきたぞ。これでいいかな?」 

晶葉「ありがとう。サイズ的にはおそらく問題無いだろう。着せてやってくれ」 

涼「それで……拓海は大丈夫なのか?」 

晶葉「もちろん。命には別状はない……ただ」 

涼「ただ……なんだよ? 脳波に異常があったのか?」 

晶葉「いや、異常はない。むしろ、”異常がなかったこと”が異常といえる」 

涼「どういう意味だよ、それ?」 


拓海「ててて……あたまいてー」 


涼「拓海。気がついたか!」


10:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:58:29.83 :kBxxtr88o

拓海「りょうか……どうなってんだ? これ」 

晶葉「見ての通り、姿形以外は向井拓海のままだ」 

涼「それがヤバいんだけどな」 

晶葉「ただ、脳の働きを調べた結果、記憶の働きをする海馬や大脳新皮質はそのままであるが、感情を司る前頭前野と扁桃体は5~6歳前後のそれと同じであることがわかった」 

涼「??? さっぱりわかんねえよ?」 

晶葉「簡潔に言うなら現在の18歳までの記憶を有した、小学校入学前の感性の向井拓海に戻ったのだ」 

涼「……いまいちピンとこねえな」


11:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:59:13.77 :kBxxtr88o

晶葉「つまり……」 


拓海「りょう」グイグイ 


涼「なんだよ? 今、大事な話してんだよ」 

拓海「といれいきたい」 

涼「ああ、さっさと行ってきな」 

拓海「ついてきて」 

涼「は? 何バカなこと言ってんだよ。ガキじゃあるまい…………まさか!!」 

晶葉「そういうことだ」 


涼「マジかよ……」


12:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 22:59:56.02 :kBxxtr88o

拓海「といれー」 

涼「はいはい。わかったっつうの」 

晶葉「とりあえず、あとでまた寄ってくれ。元に戻す方法について調べておこう」 

涼「頼んだぞ」 

晶葉「あと、このことは他者には内密に頼む。余計な混乱を招きたくはない」 

涼「どうせ、言ったって誰も信じてくんないよ」 

晶葉「それもそうか」


13:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:00:35.19 :kBxxtr88o

――――――――――――廊下(地下) 


涼(それにしても面倒なことになっちまったな) 

涼(幸か不幸か今はPがいないんだけど) 


拓海「りょーうー……」 


涼(どうすんだよ?……これから) 


拓海「りょうー」 


涼「なんだよ? 今考え事してるんだよ」 

拓海「はやいー。もっとゆっくりあるけー」 

涼「は?」 

涼(あ、そっか。こいつちびっ子の体だったな) 

涼「わかったわかった。横に並んでやるから」


14:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:01:23.35 :kBxxtr88o

涼「そこ、階段だぞ。気をつけろよ」 

拓海「わかってる……よいしょ」 

涼(普段なら二段飛ばしでスイスイ登っていくのに、今じゃ手すりを掴んで両足で一段づつか) 

涼「ほら、手を貸してやる」 

拓海「おう」 

涼「せえの……ほら」 

拓海「おおお、らくちんだぞ!」 


涼(やれやれ……気楽なもんだな)


15:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:02:26.89 :kBxxtr88o

――――――――――――廊下 


涼「ちゃんと手、洗ったか?」 

拓海「あらった!」 

涼「それならよかった」 

涼(さて、このあとどうすっかな……) 


亜里沙「あら、涼ちゃん」 


涼「亜里沙せんせい」 

亜里沙「ちょうどよかった。探してたのよ」 

涼「あっ! やべえ、ごめん! 忘れてたよ」 

亜里沙「いいのよ……あら? その子は?」 

涼(うげ! こいつがいるの忘れてた!) 

亜里沙「こんにちわ~。どうしたのかな~?」 

拓海「ありさせんせい!」 

涼「バカ! 余計なこと言うな!」 

亜里沙「あら? 私の名前知ってるの?」 

涼「え、えと、ほら! 亜里沙さん、よく子供番組出てるからさ!」


16:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:03:18.42 :kBxxtr88o

亜里沙「あら、うれしい。見ててくれてたのね。お名前はなんていうのかな?」 

拓海「たk」ムゴッ 

涼(本名ばらしてどうすんだよ! 静かにしてろ!) 

亜里沙「どうしたの? お名前は?」 

涼「え、えと!! た、た、たく……」 

亜里沙「たくちゃんって言うの? かわいいお名前ね」 

涼「そ、そうそう! 『たく』ね。あははは」 

亜里沙「涼ちゃんの親戚の子なの?」 

涼「え? あ、うん! そうそう! ちょ、ちょっと頼まれちゃってさ! あはは」 

亜里沙「たくちゃん、今時間あるかしら?」 

涼「え? う、うん」


17:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:04:02.11 :kBxxtr88o

亜里沙「じゃあ、ちょうどよかった。ありさせんせいとおうたの練習しましょう?」 

拓海「おうた……」 

涼(あー、こいつボイストレーニング苦手だもんな) 


亜里沙「ウサコちゃんもいっしょだよー」 

ウサコ『よろしくウサー』 


拓海「うさぎ!」 

亜里沙「一緒にやる?」 

拓海「やる!」 


涼(うさぎはいいのかよ……って、感性は子供だったな)


18:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:04:42.63 :kBxxtr88o

――――――――――――レッスン室 


涼(とりあえず、今は亜里沙せんせいに任せるか) 

亜里沙「はーい。それじゃあ、せんせいがオルガンを弾きまーす」 

亜里沙「おうた歌うのでついてきてくださいねー」 

拓海「せんせー」 

亜里沙「はい、なにかなー?」 

拓海「あたし、うたにがて」 

亜里沙「あらら、そうなの?……じゃあ、これを使ってね」 

拓海「これ、かすたねっと?」 

亜里沙「せんせいのお歌に合わせて叩いてみて?」 

拓海「わかった」


19:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:05:14.73 :kBxxtr88o

亜里沙「じゃあ、いきまーす」 


♪ブンガ ブンガ 


亜里沙「きーらーきーらー♪」 

拓海「……」ぺち 

亜里沙「ひーかーるー♪」 

拓海「……」ぺち 

亜里沙「おーそーらーのー♪」 

拓海「…!」ぺち 

亜里沙「ほーしーよー♪」 

拓海「!!」ぺち


21:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:05:44.87 :kBxxtr88o

拓海「おお……りょう! りょう!」 

涼「なんだよ?」 

拓海「これたのしい!」 

涼「そうか。よかったな」 

亜里沙「ふふふ」 


涼(…そうだ。晶葉のところに行かなきゃならねーんだった)


22:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:06:22.37 :kBxxtr88o

涼「亜里沙せんせい、悪いんだけどアタシ用があるんだ。ちょっとの間だけ、たくm……たくを見ててくれない?」 

亜里沙「いいわよ~。たくちゃん、おりこうだもんねー」 

涼「大人しくしてるんだぞ」 

拓海「おー、いってこい」 


涼(あいつ、こっち向かずにカスタネット叩いてやがる)


23:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:07:11.17 :kBxxtr88o

――――――――――――研究室 


涼「どうだ? 何かわかった?」 

晶葉「おお、ちょうどよかった。今、検証結果をまとめたところだ」 

涼「それで? どうなんだ?」 

晶葉「まあ、そう急かすな。まずは、この薬はあくまで試薬だ。効果が永続するものではない。体内の細胞活動を一時的に……」 

涼「待った。小難しいことはわかんねーけど、要はしばらくしたら元に戻るってことだな」 

晶葉「いかにも」 

涼「それはどれぐらいかかるんだ?」 

晶葉「拓海が舐めていた時間や、脳波の示す数値からおそらく7~8時間ほどだろう」 

涼「つまり、明日の朝には戻ってるってことか」 

晶葉「そういうことになる」


24:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:08:16.53 :kBxxtr88o

涼「それを聞いて安心したよ。でも、なんだってこんな物騒なもの作ったんだよ?」 

晶葉「科学者として生命の神秘に挑む事は永遠のテーマだ」 

涼「そんなもんなのか」 

晶葉「今回、私が挑んだのはある謎を解明したいからだ」 

涼「謎?」 

晶葉「今回の結果で、幸か不幸か確実に若返ることが実証された。もし、これを君が舐めていたらどうなった?」 

涼「そりゃ、アタシが5,6才になってただろうな」 

晶葉「そうだ。では、菜々が拓海と同じ分量を舐めたらどうなる?」 

涼「そりゃあ……4,5才くらいに……」 

晶葉「果たして、本当にそう言い切れるか?」 

涼「……」 

晶葉「私は思うのだ。もし、これで菜々の姿がいつもと変わらければ……」 

涼「おいやめろ」 



晶葉「ウサミン星人は実在する重要な証となる!」 



涼「」


25:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:08:53.43 :kBxxtr88o

晶葉「おそらくウサミン星人は姿形こそ、我々と似通っているが内部の組織構造は異なるはず」 

晶葉「我らの常識が通用しなければ、それは異星人と言っても過言ではなかろう」 

涼「……」 


涼(死ぬほどくだらねえ……拓海もとことんツイてねえな)


26:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:09:28.90 :kBxxtr88o

――――――――――――レッスン室 


涼「おーっす。たくm……じゃねえや。たくー、戻ったぞ」 

亜里沙「しーっ」 

涼「ん?」 

亜里沙「ほら、あそこ」 


拓海「……すーっ……すーっ……」 


涼「眠ってやがるのか。気楽なもんだな」 

亜里沙「ウサコちゃんと寝てるのよ。カワイイわね」 

涼「やれやれ……」


27:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:10:06.69 :kBxxtr88o

――――――――――――30分後 


拓海「……ん……うーん」 

涼「よう。目ェ、覚めたか?」 

拓海「おう……ふわぁ……」 

涼「とりあえず、ここにアンタの荷物まとめといた」 

拓海「うん」 

涼「今は、この場を離れよう。時間も時間だし、ここに残ってると下手なボロがでそうだ」 

拓海「だなー」


28:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:10:56.10 :kBxxtr88o

――――――――――――駐輪場 


涼「これからどうすんだ?」 

拓海「かえる」 

涼「どうやって?」 

拓海「このばいくでにきまってんだろー」 

涼「誰が?」 

拓海「うるせー!……よいしょ……あれ?」 

涼「……」 

拓海「りょう! あたしをばいくにのせてくれー」 

涼「無理に決まってんだろ。足も届いてないのに」 

拓海「むー」 

涼「それに途中で捕まるだろ」 

拓海「めんきょしょうはもってる」 

涼「それで警察がOKするわけねえだろ」 

拓海「うー」


29:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:11:44.36 :kBxxtr88o

???「よう、涼じゃん? 何やってんだ?」 

涼「げっ! 夏樹!」 

夏樹「何驚いてんだよ? あれ? その子は?」 


涼「こ、これは……」 

拓海「なつき!」 

夏樹「お、ちびっ子? あたしの名前知ってんのか?」 

拓海「だってあたしh…」ムゴ 

涼(何度言ったらわかるんだよ! バラしてどうすんだ!?) 

拓海「……」コクコク 

夏樹「ん? どうした?」 

涼「いや……こいつさ、親戚の子なんだけどちょっと預かっててさ……あはは」 

夏樹「でも、あたしのこと知ってるみたいだぞ?」 

涼「ほ、ほら! 前に一緒にイベントやった時、見てたんだよ!! あたしを見るついでにさ」 

夏樹「へー、なんか嬉しいな。あんがとな」 

拓海「おう!」 

夏樹「でも、そのバイクからは降りたほうがいいぞ。すんげえ、怖い奴のだから」 

拓海「だいじょうぶ! あたしのだから!」 

夏樹「あはは。怖いもの知らずだな。大きくなったら乗ってみるといいさ」


30:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:13:04.25 :kBxxtr88o

夏樹「あ、そうだ! 涼」 

涼「な、なんだ?」 

夏樹「今度のライブの打ち合わせ、明日やるからな」 

涼「あ、そのことか。OK。わかった」 

夏樹「あと、拓海にもそのこと伝えたいんだけどいねえんだよ」 

涼「そ、そうなのか……もう帰ったんじゃね?」 

夏樹「バイク置いてか?」 

涼「うっ」 

夏樹「とりあえず、今、携帯に連絡してみるか……」 


涼(ヤバい! あいつの携帯は今、ここにあるんだった!) 


涼「ま、待て!」 

夏樹「ん?」 

涼「あ、アタシ後で連絡するから、その時言っておくわ!」 

夏樹「そっか。頼んどくわ。じゃあな、ちびっ子」 

拓海「またなー」 


涼(つ、疲れる……)


31:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:13:52.38 :kBxxtr88o

涼「なんとか夏樹はしのいだか……」 

拓海「……かえる」 

涼「だから、どうやって?」 

拓海「でんしゃで」 

涼「チビが夕方のラッシュアワーで帰れるわけないじゃん。第一、いつもバイクだから電車で帰り方知らないだろ?」 

拓海「じゃあ……とまる」 

涼「どこに?」 

拓海「ねっとかふぇ」 

涼「子供を泊めるわけないって」 

拓海「……うぅ……あるいてかえる!」 

涼「余計無謀だろ」


32:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:14:24.65 :kBxxtr88o

拓海「……ううぅ……いけるし!」グスッ 

涼「……はぁ……泣くなよ」 

拓海「ないてない!!」 

涼「わかったわかった……うちに来なよ」 

拓海「うち?」 

涼「アタシん家。ここからそんなに遠くねえし、一人よりマシだろ?」 

拓海「いいのか?!」 

涼「そのかわり、騒いだりすんなよ?」 

拓海「わかった!!」 


涼(やれやれ……)


33:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:15:07.42 :kBxxtr88o

――――――――――――繁華街 


拓海「りょう、どこいくんだー?」 

涼「買い物だよ。アンタの替えの下着も買わなきゃなんねーし。あとは晩飯だな」 

拓海「かいものかー! めしはなににするんだ?」 

涼「パスタでもするか」 

拓海「ぱすた?」 

涼「スパゲッティだよ。ナポリタンにすっかな」 

拓海「おー。うまくつくれよ」 

涼「このやろー、何で上からなんだよ?」


34:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:15:42.88 :kBxxtr88o

――――――――――――デパート 


涼「えっと、まずは下着、次にパジャマと……歯ブラシもいるな」 

涼「まあ、今日一日だけだし、こんなもんだろ?」 

涼「これでいいよな、たくm……あれ?」 

涼「あいつどこに……って、いた」


35:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:16:14.05 :kBxxtr88o

拓海「……」 

涼「おい、何やってんだ? 勝手に離れるなよ」 

拓海「りょう、あれ」 

涼「ん? ウサギのぬいぐるみか?」 

拓海「ほしい!」 

涼「は? そんな無駄遣いしてらんないよ。いくぞ」 

拓海「やだ! かってくれー!」 

涼「お前なあ、どうせ今日一日だろ? 何にも使い道ねえじゃん?」 

拓海「やだやだやだ! かえかえかえ!!」 

涼「わがまま言うなって!」 

拓海「かってかってかって! わーん!」


36:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:16:48.24 :kBxxtr88o

主婦A「あら、子供が泣いてるじゃない」ヒソヒソ 

主婦B「ヤンママってのかしら? 子供に厳しすぎない?」ヒソヒソ 


涼(えええー!? 待ってくれよ……) 


涼「わかったわかった! 買うから静かにしろって!」 

拓海「ほんとか!?」 

涼「そのかわり、この料金は後で請求するからな!」 

拓海「あっ、そのしろいのじゃなくて、ピンクのウサギな!」 

涼「話を聞けよ!」


37:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:17:19.07 :kBxxtr88o

拓海「うさぎー♪ うさぎー♪」 

涼「ちくしょー……余計な出費だった」 

拓海「はやくいこうぜー」 

涼「にゃろう……はしゃぎやがって」


38:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:18:01.02 :kBxxtr88o

――――――――――――涼の部屋 


涼「ついたぞ。ここだ」 

拓海「おおおおお」 


たたたたた 


拓海「べっどだ! わーい」 

涼「こら! まずは手を洗ってうがいだろ?」 

拓海「おお、そうだった」 

涼「ちゃんと洗うんだぞ?」 

拓海「わかったー」 

涼「やれやれ……さて、アタシも準備するか」


39:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:18:34.48 :kBxxtr88o

拓海「りょう、なにやってんだ?」 

涼「んー? 今はメシの準備だな。もうちょっと待ってな」 

拓海「あたしもやるぞ」 

涼「別にいいよ。包丁も使ってるし、お湯も沸かしてるからチビが来るには危ねえよ」 

拓海「やだ! なにかてつだいさせろ!!」 

涼「あー、わかったわかった。じゃあな、風呂掃除してくれるか?」 

拓海「おう、まかせろ!」 


涼(一応、役には立ちたいと思ってるんだな)


40:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:19:46.70 :kBxxtr88o

――――――――――――10分後 


拓海「りょうー! おわったぞー」 

涼「おう、サンキュー……ってなんだそりゃ!!」 

拓海「ん?」 

涼「泡まみれじゃねーか! こっちきな、拭いてやるから」 

拓海「へへー」 

涼「ったく……何をやったらそんなに……ってまさか!?」 


がらっ 


涼「」 

涼(風呂場が見渡す限り泡だらけだな……) 


拓海「きれいになったぞ」 

涼「……おう、あんがとな」ナデナデ 

拓海「へへへっ」 


涼(悪気はないんだよな…)


41:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:20:17.18 :kBxxtr88o

拓海「つぎは? つぎだつぎ!」 

涼「うーん……おっ! そうだ!」 

拓海「?」 

涼「拓海、お前には特別任務を与えよう」 

拓海「とくべつ……にんむ?」 

涼「そうだ。やれるか?」 

拓海「まかせろ!」


42:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:20:50.04 :kBxxtr88o

涼「お前にはな、今日あった出来事を絵に描く仕事をやろう」 

拓海「えをかくのか?」 

涼「おう、そこに五線譜があるだろ? その裏が白いからそこ描いてくれ」 

拓海「たのしそうだな!」 

涼「ペンは自由に使っていいからな」 

拓海「おうっ!」 


涼(この間に一気に終わらせるか)


43:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:21:21.75 :kBxxtr88o

――――――――――――30分後 


涼(ふう……あらかた終わったかな?) 


涼「よーし、メシできたぞー」 

拓海「……」 

涼「おーい、拓海ー!」 

拓海「……」 


涼(一生懸命、絵を描いてるな……もうちょっと待ってやるか)


44:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:22:17.25 :kBxxtr88o

――――――――――――10分後 


拓海「できたー!」 

涼「ん? できたのか。どれどれ……」 

拓海「ほら!」 

涼「これは?」 

拓海「あたし!」 

涼「これは?」 

拓海「りょう!」 

涼「……これはなんだ? ネコ?」 

拓海「ちがう! うさぎ!」 

涼「ああ、さっき買ったやつか。すると周りにいる小さいのは誰だ?」 

拓海「えと……あきはと、ありさせんせいと……なつき!!」 

涼「随分ちっちゃいな」 

拓海「さきに、あたしとりょう、かいたらたりなくなった」 

涼「ははは。そっか」 

拓海「にんむできたか?」 

涼「おう、よくやったぞ」ナデナデ 

拓海「えへへ」 

涼「じゃあ、メシにしようか」 

拓海「めしー!」


45:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:22:47.86 :kBxxtr88o

涼「じゃあ、食おうぜ」 

拓海「うまそー」 

涼「あ、ちょっと待て。拓海」 

拓海「ん?」 

涼「ソースが服についちまう。ほら、前掛けな」 

拓海「こどもみたいだー」 

涼「子供だろ」


46:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:23:42.01 :kBxxtr88o

涼「じゃあ、手を合わせて」 

拓海「いただきまーす」 

涼「はい、どうぞ」 

拓海「……」パク 

涼「……どうだ?」 

拓海「うまい!」 

涼「そっか、そりゃよかった」 

拓海「うまいうまい」 

涼「あ、口にソースついてるぞ。ちょっと待ちな。取ってやるから」 

拓海「んー」 

涼「よし、取れた」 

拓海「あんがとー」 

涼「あいよ」


47:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:24:19.10 :kBxxtr88o

拓海「くったー」 

涼「うまかったか?」 

拓海「うまかった。ごちそうさまでした」 

涼「お、よく言えたな」 

拓海「よいしょ……」カチャカチャ 

涼「ん? 何やってんだ?」 

拓海「はこぶ、しょっき」 

涼「おー、意外にお利口なんだな」 


涼(そういや、こいつ、こういうとこは礼儀正しかったよな)


48:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:24:49.65 :kBxxtr88o

涼「よし、風呂の準備できたぞ」 

拓海「おー。ふろーふろー」 

涼「だー! ここで脱ぐなよ! ほらほら、脱衣場行くぞ」 

拓海「りょうははいらないのかー?」 

涼「アタシは後でいいや」 

拓海「いっしょにはいろうぜー」グイグイ 

涼「わかったわかった! 引っ張るなって!」


49:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:25:38.16 :kBxxtr88o

――――――――――――浴場 


拓海「ふろー!」 

涼「ああ、待ちなって。体洗うから。ほら座って」 

拓海「おう」 

涼「しっかり洗わないとな」ゴシゴシ 

拓海「くすぐったい」 

涼「がまんしなって……お湯かけるぞ」 


ざばー 


拓海「きもちいい!」 

涼「次は頭だな。目をつぶってなよ」 

拓海「うん」 


ざばー 


拓海「ぺっぺっ……くちにはいった」 

涼「あー、わりーわりー。ゆっくりかけるからな」


50:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:26:20.42 :kBxxtr88o

かぽーん 


涼「ふう……やっと湯船につかれる」 

拓海「……」ジー 

涼「ん? どうした?」 

拓海「りょう、お◯ぱいおおきい」 

涼「嫌味かよ……まあ、今はな」 

拓海「ほんとうは、あたしのほうがおおきいのにー」ペチペチ 

涼「いたいいたい! 叩くなって!」


51:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:26:59.82 :kBxxtr88o

――――――――――――リビング 


拓海「わーい」 

涼「こらっ! 裸で走るなっ!」ギュ 

拓海「つかまった」 

涼「つかまえた。ちゃんと拭かなきゃダメだろ?」 

拓海「そうだなー」 

涼「本当にわかってんのかよ……下着はひとりで着れるか?」 

拓海「だいじょうぶ!」 

涼「下着つけてパジャマに着替えたら、そこで待ってなよ。髪乾かしてやるから」 

拓海「おう!」


52:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:27:37.84 :kBxxtr88o

ぶおー 


拓海「~♪」 

涼「お前さ」 

拓海「ん~?」 

涼「意外に髪キレイだよな?」 

拓海「そうかー?」 

涼「こんないいもん持ってんだから、もっと大事にしてやんなよ」 

拓海「りょうのかみも、さらさらだぞ」 

涼「ははっ。あんがとな」


53:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:28:22.50 :kBxxtr88o

拓海「ふわぁ……」 

涼「眠くなったか?」 

拓海「うん……」 

涼「寝る前には歯を磨かなきゃな。ほら、歯ブラシ」 

拓海「うん……」 

涼「一人で大丈夫か?」 

拓海「……だいじょうぶ……ふわぁ」 


涼(半分寝てるじゃねーか)


54:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:29:34.81 :kBxxtr88o

涼「ちゃんと磨いたか?」 

拓海「みがいたー……」 

涼「見せてみな」 

拓海「いー」 

涼「よし、合格」 

拓海「うさぎはー?」 

涼「ほら、ここ。抱っこして寝るのか?」 

拓海「うん。りょうはまだねないの?」 

涼「アタシは明日の準備しとかないとな。ライブに必要な機材とか、セットリストの確認とか」 

拓海「そっか……」 

涼「アンタもしなきゃいけないんだけど……無理だもんな」 

拓海「ねるー」 

涼「はいはい。おやすみ」 

拓海「おやすみー」


55:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:30:08.79 :kBxxtr88o

――――――――――――一時間後 


涼「ふうぅ……こんなもんかな?」 

拓海「りょう……」 

涼「ん? 起きたのか? うるさかったか?」 

拓海「ちがう……といれ」 

涼「一人でいけるか?」 

拓海「……」 

涼「わかったよ。ほら、行こうぜ」 

拓海「うん」


56:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:30:51.64 :kBxxtr88o

じゃー 


拓海「ふわぁ……」 

涼「どうだ? 眠れそうか?」 

拓海「りょうはねないのか?」 

涼「うーん、ホラー映画見ようかなと思ってるけど」 

拓海「……」 

涼「……わかったよ。寝るよ」 

拓海「うん」


57:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:31:23.55 :kBxxtr88o

涼「ほら、これでいいか?」 

拓海「もうちょい、こっち」 

涼「はいはい」 

拓海「て、にぎってて」 

涼「わかったよ」 

拓海「…………すぅ……すぅ」 

涼「寝たのか……」 



涼(こうやって寝顔見てるぶんにはかわいいんだけどな……) 

涼(今日はいろいろあって疲れた……) 

涼(アタシも寝るかな……おやすみ)


58:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:32:09.37 :kBxxtr88o

――――――――――――翌朝 


涼「うーん……むにゃ……」 


ふにょん 


涼「ん……なんだ……この感触?」 

拓海「……ぐーっ……ぐーっ」 

涼「おっ! おおっ!! 拓海! 起きろ!!」 

拓海「んー……何だよ?……もう少し寝かせろ……ぐぅ」 

涼「寝てる場合じゃねえよ! お前、元に戻ってるぞ!!」 

拓海「……!!」ガバッ


59:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:33:08.12 :kBxxtr88o

拓海「おおおおっ!! もどった!! ん? ここどこだ?」 

涼「アタシん家だよ」 

拓海「おお、そうか。あれ? バイクは?」 

涼「事務所においてるぞ」 

拓海「マジか! 取りに行ってくる!!」 

涼「あっ! おい、バカ!!」 


だだだだだ 

がちゃん 



<ギャー! 

<ワー! 



だだだだだだ 

がちゃん 


拓海「なんだよ! この格好!! なんでこんなピチピチのパジャマなんだよ!?」 

涼「すぐ気づけよ……」


60:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:33:40.51 :kBxxtr88o

――――――――――――事務所 


涼「すると、昨日のことは覚えてないのか?」 

拓海「んー……晶葉のとこで飴食って、そこからよく覚えてねえ」 

涼「呆れた奴だな。あの後すげえ大変だったんだぞ?」 

拓海「マジか。そりゃ世話かけたな」 

涼「まあ、別にいいや。アタシも新鮮だったし」 

拓海「なんのことだ?」 

涼「なんでもないよ」


61:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:34:22.87 :kBxxtr88o

拓海「ふーん……」モグモグ 

涼「あれ? アンタ何食ってんの?」 

拓海「ん? そこに団子あったんでな」 



がしゃん 



あやめ「拓海殿……その団子……」 


拓海「ん? これがどうした?」 

あやめ「それは代々、浜口家に伝わる若返りの秘薬で……」 




涼「いい加減にしろッ!!」 





おわり


62:◆yfWmR9mD4k:2014/07/09(水) 23:36:53.49 :kBxxtr88o

※これでおわりです 
 面倒見の良い涼さんだから、きっと育児もうまいのではと思い書きました 
 ロりたくみんもいいものです 
 もちろん晶葉ちゃんはそんな発明しないと思います 

 ここまで読んでいただいてありがとうございました


元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404913847