1:2013/01/23(水) 05:36:03.84 :SLOLcvir0

貴音「離婚、しましょうか」 

響「は?」 

貴音「お別れです、響」 

響「……ちょっと待て、貴音」 

響「それはできない」 

貴音「何故です!」 

響「んーとな、貴音」 



響「離婚ってのは、結婚してないとできないんだぞ」 

貴音「なんと」 


2:2013/01/23(水) 05:36:26.17 :SLOLcvir0

響「というか、どうしたんだ貴音!? 急に、お別れだなんて」 

響「もしかして自分、貴音に何か悪いことしちゃったか……?」 

貴音「いえ、そうではないのです」 

貴音「ただ、男もすなる離婚といふものを、一度してみたかっただけで」 

響「そ、そっか……離婚って、基本的に男女揃ってするものだけどな」 

響「それにしても、離婚ねぇ……ドラマの役作りとか?」 

貴音「ええ、そんなところです」 

響「ふうん、貴音も大変なんだなあ」 

響「というか、貴音は相変わらず変わってるな」 

貴音「はて」 


3:2013/01/23(水) 05:36:57.35 :SLOLcvir0

響「いくら仕事のためとはいえ、進んで離婚をしようだなんて」 

響「そもそも離婚なんてのは、しない方がいいものなんだぞ?」 

貴音「しかし、私には他に手立てが……」 

響「ま、そうだよなあ……」 

響「実体験を聞いて回るにしても、離婚経験者なんてそうそういるもんじゃないし」 

響「うちの事務所の女性陣に至っては、離婚どころか結婚すらしてな―― 

響「!?」ビクッ 

貴音「響、どうしました?」 

響「……いや、今しがた背後に殺気を感じたんだけど」チラッ 

響「気のせいか……?」 

貴音「?」 


4:2013/01/23(水) 05:37:27.42 :SLOLcvir0

響「あー……こういう時は、律子に相談するのが一番なんだろうけど」 

響「いないしな、今」 

貴音「打つ手無し……ですか」 

響「いや、心当たりならあるぞ」 

貴音「なんと!」 

響「この時間なら、まだ事務所にいるだろうし」 

貴音「して、それは一体……!?」 

響「蛇の道は蛇、だ」 

響「演技のことは、演技のプロに聞けばいいんだよ」 

貴音「!」 


5:2013/01/23(水) 05:38:03.99 :SLOLcvir0

伊織「それで、私のところに来たってワケ?」 

響「ああ、よろしく頼むぞ」 

響「自分完璧だけど、演技のこととか正直よくわからないし」 

伊織「随分と欠けた完璧だこと……それにしても」 

伊織「あんたも馬鹿ね、役作りのために離婚だなんて聞いたこともないわよ」 

貴音「真、その通りでございます……」 

伊織「あんた、宇宙人の役にキャスティングされたら宇宙人になるの? 無理でしょう?」 

貴音「返す言葉もありません……」 

伊織「ちょっとはイメージしなさいよ、考えたらわかるでしょうが」 

貴音「はい……」 

響「おお、なんというセイロンティー」 


6:2013/01/23(水) 05:38:46.04 :SLOLcvir0

伊織「演技はね、イメージすることが大切なのよ、わかる?」 

伊織「イメージして初めて、役作りってものができるの」 

伊織「そのための材料として、何冊か本を貸してあげるから」 

伊織「きちんと読み込んで、ちゃんとイメージするのよ」 

伊織「いいわね?」 

貴音「はい!」 

響「伊織って、中学生なんだよな……?」 


7:2013/01/23(水) 05:39:14.09 :SLOLcvir0

貴音「水瀬伊織、本日は真にありがとうございました」 

伊織「どういたしまして」 

貴音「この御恩は、いつか必ず」 

伊織「Dar y recibir」 

貴音「?」 

伊織「困ったときはお互い様、よ」 

伊織「そうだ、その辺に転がってる双子達のゲーム機」 

伊織「あんたが、なおしといてあげて」 

貴音「ふふ、かしこまりました」スタッ 


8:2013/01/23(水) 05:39:43.41 :SLOLcvir0

響「なあ」 

伊織「ん、何よ」 

響「貴音って、機械に詳しいのか?」 

伊織「はあ、そんなわけないでしょ? あの娘、携帯ですら上手く扱えないのに」 

響「だよな、そうだよな……?」 

伊織「それより、響」 

響「うん?」 

伊織「あんたって、テレビ見る方?」 

響「んー……いや、みんなが出てるのは見てるつもりだけど」 

響「他はさっぱりだな」 

伊織「そ、ならいいわ」 


9:2013/01/23(水) 05:40:11.86 :SLOLcvir0

伊織「じゃ、私はそろそろ仕事だから」 

響「今からか? ああ、ラジオのゲストだっけ」 

伊織「ええ、聞き逃すんじゃないわよ」 

響「おう、気をつけるよ」 

響「伊織も気をつけろよ、道が滑りやすくなってるから」 

伊織「そうね、用心するわ」 

伊織「いってきます」 

響「いってらっしゃい、今日はありがとなー」 


10:2013/01/23(水) 05:40:42.01 :SLOLcvir0

貴音「響、お待たせしました」 

響「お、早かったな」 

貴音「? そうですか?」 

響「それよりどうする?」 

響「一旦、本置きに家に帰るか?」 

貴音「ええ、そうしましょう」 

響「ん、わかった。 持つよ、本」 

貴音「ふふ、ありがとうございます」 


11:2013/01/23(水) 05:41:14.73 :SLOLcvir0

貴音「今日は、とても寒いですね」 

響「そうだな、足元凍ってるから気をつけるんだぞ」 

貴音「その心配はありませんよ、響」 

響「? 何でだ?」 

貴音「私は、少し浮いていますから」 

響「浮いてるの!? 宙に!?」 

貴音「いえ、存在が」 

響「ああ、浮いてるってそういう……いやいや、それもどうなんだ!?」 

貴音「足元どころか、空気をも凍らせてみせましょう」 

響「最悪だー!!」 


12:2013/01/23(水) 05:41:42.67 :SLOLcvir0

響「というか、貴音は別に浮いてないだろ」 

貴音「そうでしょうか」 

響「うん、むしろ浮いてるのは自分のほうさー」 

響「この前のライブ、なぜか自分以外みんな中学生だったし」 

響「ぼっちだとか、よく言われるしな」 

貴音「いいえ、響は決して浮いてなどいませんよ」 

貴音「私が保証します」 

響「貴音……」 

貴音「響には、浮いた話の一つもありませんもの」 

響「やかましいよ!」 


13:2013/01/23(水) 05:42:23.48 :SLOLcvir0

貴音「時に、少し寄りたい所があるのですが」 

貴音「よろしいでしょうか」 

響「うん? 別にいいけど、どこ行くんだ?」 

貴音「それは、とっぷしぃくれっとでございます」 

響「……シークレットもなにも、これから行くんだろ?」 

貴音「ええ、着いてからのお楽しみということで」 

響「お楽しみなら、いいんだけどな?」 

貴音「不幸せはー歩いてこない、だーから歩いて行くんだねー」 

響「不吉な歌を口ずさむな!」 


14:2013/01/23(水) 05:43:03.58 :SLOLcvir0

貴音「さあ、到着しましたよ響!」 

響「こ、ここは……!」 











響「……区役所?」 


15:2013/01/23(水) 05:43:37.52 :SLOLcvir0

貴音「さあさ、中に入りましょう」 

響「ちょ、ちょっと待って」 

響「何、なんで区役所?」 

響「一体これのどこが楽しいんだ?」 

貴音「はあ……みなまで言わないとわかりませんか、響は」 

響「自分が悪いのか……?」 

貴音「仕方がありませんね、みなまで言いましょう」 

貴音「響」 

貴音「私達は、今から――」 





貴音「離婚します」 

響「は?」 


16:2013/01/23(水) 05:44:13.86 :SLOLcvir0

貴音「離婚、しましょうか」 

響「…………いやいやいや、それはおかしいって」 

響「ドラマのことなら、伊織に解決してもらっただろ?」 

貴音「あれは嘘です」 

響「なっ!?」 

貴音「ドラマに出演する予定は、今の所ありません」 

貴音「私はただ、男もすなる離婚といふものをしてみたいだけなのです」 

響「うぐっ……ま、まあそれはいい」 

響「でもな貴音、さっきも言ったと思うが」 

響「離婚ってのは、結婚してないとできないんだぞ?」 

貴音「ええ、承知しております」 

貴音「なので、響」 

貴音「結婚しましょう」 

響「!?」 


17:2013/01/23(水) 05:44:47.61 :SLOLcvir0

響「……なあ貴音、ちょっとイメージしてみようか」 

響「常識的に考えてさ、無理だろ?」 

貴音「ふふ、心配はご無用ですよ」 

貴音「この度18になった私が、夫を務めますので」 

響「そういう問題では無く!」 

響「あー、それにな。 結婚するにも、色々と必要なものが―― 

貴音「響の分も含めて、全て用意してあります」 

響「」 


18:2013/01/23(水) 05:45:27.63 :SLOLcvir0

貴音「響の印鑑と、それから……」ゴソゴソ 

響「そ、それ! 自分の戸籍謄本じゃないか!?」 

貴音「ええ、必要とのことでしたので」 

貴音「わざわざ沖縄から郵送してもらいました」 

響「そんな、簡単に取れるもんじゃ……」 

響「!」 

響(ちょっと待てよ) 

響(戸籍って確か、生まれた場所とかも書いてあるんだよな……) 

響(貴音の、いわゆる『トップシークレット』の部分) 

響(気になる) 

響「なあ、貴音」 

響「そっちの書類も、見せてくれよ」 

貴音「!」 


19:2013/01/23(水) 05:45:59.60 :SLOLcvir0

貴音「そ、それは……とっぷしぃくれっとです故に、お見せできません」 

響「なんだよ、婚約者にも見せられないってのか?」 

貴音「…………どうぞ」 

響「ん、ありがと」 

響「えーっと……」 

響「!」 

響「貴音、お前―― 

貴音「響」 

貴音「それ以上は、いけません」 

響「あ、ああ……」 


20:2013/01/23(水) 05:46:28.52 :SLOLcvir0

貴音「さて、秘密を知ったからには」 

貴音「私と、結婚してもらいますよ」 

響「お、おう」 

響(ま、どうせ通らないだろうしな) 

響(だって自分たち、女同士だし) 

響(……………………) 

貴音「どうしました、浮かない顔をして」 

響「いや、別に……貴音は、浮かれてるな」 

貴音「ええ、もちろん」 

貴音「だって、夢が叶うわけですから」 

響「……そっか」 

貴音「さあ、行きましょうか」 

―――― 
―― 


21:2013/01/23(水) 05:47:08.83 :SLOLcvir0

P「二人とも、結婚おめでとう!」 

 「「「「おめでとー!!」」」」 

貴音「ありがとうございます!」 

響「な」 

伊織「それにしても、急な話よねえ」 

律子「まったく、結婚するなら相談してくれれば……」 

小鳥「まあまあ、いいじゃないですか」 

響「なな」 

春香「いやー、先越されちゃいましたね~あずささん!」 

あずさ「春香ちゃ~ん、ちょっとこっちに来てくれるかしら~?」 

春香「嫌ですー」 

響「ななな」 

雪歩「ふふ、響ちゃんと四条さんってお似合いだよね」 

千早「ええ、本当にいいカップルだと思うわ、掛け値なしに」 

美希「なの!」 

響「なななな……」 

響「なんでやねん!!!」 

 「!?」 


22:2013/01/23(水) 05:47:40.95 :SLOLcvir0

真「ど、どうしたの響!? 突然、関西弁になって……」 

真美「あいでんててー崩壊の危機だよ、ひびきん!」 

響「な、なんでこんなに、すんなり結婚できたんだ!?」 

亜美「と言いますと?」 

響「だって自分たち、女同士なのに――! 

P「なんだ、そんなことか」 

響「そんなことって!」 

P「おいおい、これでも俺はプロデューサーだぞ?」 

P「法一つ変えられないで、お前達のプロデュースができるかよ」 

響「」 


23:2013/01/23(水) 05:48:33.97 :SLOLcvir0

貴音「響」 

響「た、貴音」 

貴音「そう深く考えることはありません」 

貴音「私と響は結婚することが出来た、それでいいではありませんか」 

響「そうは言ってもな……どうせ、この後すぐに離婚するんだろ?」 

貴音「いいえ、そんなことはしません」 

響「!?」 

貴音「だって、離婚というものは――」 

貴音「しない方がいいもの、なのでしょう?」 

響「……はは、貴音には敵わないな」 

貴音「おや、今度は浮ついたような顔をしていますね」 

響「そうか? まあ、そりゃそうだろうな」 

響「だって――夢が叶ったんだから」 


24:2013/01/23(水) 05:49:24.60 :SLOLcvir0

―――― 
―― 

小鳥「という話を、考えてみたんだけど」 

小鳥「どうかしら?」 

伊織「あんた、真面目に仕事しなさいよ……」 


春香「千早ちゃん、離婚しよう!」 

千早「は?」 

-fin- 


元スレ
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