1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/01(日) 23:47:15.29 :b23/FXrgO
 
社長「おお、君がヤン・ウェンリー君かね?待っていたよ」 

ヤン(やれやれ。やっと念願の年金生活を送れると思っていたのに) 

社長「ふむふむ。…なるほど、いい面構えだ」 

ヤン(まったくハイネセンのお偉方ときたら…せっかくトリューニヒト氏がご退場あそばしたというのに、思考パターンはあまり代わり映えしないな) 

社長「ヤン君?」 

ヤン(まぁ、帝国からの隠れ蓑にはちょうど良さそうではあるが) 

社長「おーい!ヤン・ウェンリー君!」 

ヤン「え?ああ、失礼。よろしくお願いします、高木社長」 


2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/01(日) 23:55:32.31 :b23/FXrgO

社長「早速だが仕事の話に入りたい」 

ヤン「ええ。伺いましょう」 

社長「現在我が事務所には14人のアイドルが所属している。その中の3人は既に竜宮小町というユニットを組んでいるから、ソロで活動しているアイドルは11人だ」 

ヤン(11個艦隊か…食わせるのが大変そうだな) 

社長「君にはその中から、3人のアイドルを担当して貰いたい」 

ヤン(ふむ…直属の3個艦隊となると、まずは運用システムを構築する必要があるな) 

社長「どうかね?出来そうかね?」 

ヤン「確約はできませんがね。まぁ、手の届く範囲のことはやってみます」


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 00:02:02.90 :UK+1fNokO

社長「では、担当して貰うアイドルだが…」 

ヤン「先に11人の詳細なプロフィールを見せて頂けませんか」 

社長「あぁ、構わないとも。これが彼女たちのプロフィールを纏めたものだ」サッ 

ヤン「どうも」スッ 


社長「みんないい子たちだよ」 

ヤン(いい子ねぇ。お偉方というのは、どうも甘言を吐きたがるものらしい) 

ヤン(実はいい子では無かったとき、誰が市民に対して責任を負うと思っているのやら)


7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 00:10:45.80 :UK+1fNokO

~15分後~ 

ヤン「お待たせしました。決まりましたよ」 

社長「おお。それで?誰を選んだのかね?」 

ヤン「まずは…我那覇響。それから高槻やよい。最後に如月千早」 

社長「ふむ。理由は?」 

ヤン「私の琴線に触れたと申し上げておきましょう」 

ヤン(軽々しく語るのは得策じゃなさそうなんでね。やれやれ。我ながら疲れる性分だ)


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 00:16:05.57 :UK+1fNokO

社長「では、3人を呼ぶとしようか」 

ヤン「できれば2人きりで個別に話をさせて頂けませんか?」 

社長「あぁ、構わないとも。談話室を使ってくれたまえ」 

ヤン「恐縮です。それでは、私は先に談話室に入っておきますので」 

社長「うむ。先ほど名前を挙げた順番に入らせよう」 

ヤン「よろしくどうぞ。それでは」 


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 00:20:56.85 :UK+1fNokO

~談話室~ 

コンコン 

ヤン「どうぞ。鍵はまだ開いているよ」 

響「はいさーい!自分、我那覇響だぞ!よろしくね、新しいプロデューサー!」 

ヤン「ヤン・ウェンリーだ。よろしく、響。さ、座ってくれ」 

響「はーい」ストン 

ヤン(さてと…)


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 00:27:11.82 :UK+1fNokO

響「自分、沖縄出身なんだ!東京に出てきたときは人の多さに驚いちゃってさ!」 

ヤン(早速おいでなすったか) 

響「そうだ!自分さー、いっぱいペット飼ってるんだぞ!ハム蔵、イヌ美、ワニ子」 

ヤン「響」 

響「へ?まだ話の途中だぞ?」 

ヤン「その話はまた後日。本題に入るとしよう。シェーンコップ風に言うなら…そう、時間はサファイアより貴重だからね」 

響「わ、わかった」


13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 00:33:07.17 :UK+1fNokO

ヤン「君はどんなアイドルになりたいのかな?」 

響「どんな?うーん…」 

ヤン「考えたことが無かったのかい?」 

響「い、いや…えっと…そうだ!自分、ダンスが得意なんだ!だからダンスを活かしたアイドルになりたいと思ってるんだ!」 

ヤン「なるほどねぇ。しかし、残念ながら思考の自由は行動の自由には直結しないものでね」 

響「ど、どういうこと?」 

ヤン「思うのは勝手、ってことさ」


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 00:39:21.34 :UK+1fNokO

響「え?え?」 

ヤン(やれやれ。仕事をしに来たつもりだったが、どうやら託児所に紛れ込んでしまったらしい) 

響「自分、間違ったこと言っちゃった?」 

ヤン「いや。思想の自由は憲法によって保証されているからね。その点において、君は何も間違っていない」 

響「そう…なの?」 

ヤン「ただし、実際に行動に起こすとなれば別だ」 

響「どんなふうに?」 

ヤン「地位に伴う責任が付随する。もっとも、個人の自由と権利に比べればささいなことたけどね」


17:>>14アイゼナッハ「…」 2012/04/02(月) 00:44:58.40 :UK+1fNokO

響「うーん…もう少し分かりやすく説明して欲しいぞ」 

ヤン「負けたときにどうするか、ということさ」 

響「負ける?アイドルとして成功出来なかったらってこと?」 

ヤン「ご名答。2205年もののブランデーで乾杯したいところだね」 

響「成功できなかったら…」 

ヤン「もちろん勝つための算段はつけるつもりだけどね。ヤン・ウェンリーは負けるための戦いはしないからね」 


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 00:51:28.65 :UK+1fNokO

響「成功できなかったら…沖縄に帰るかなぁ」 

ヤン「帰って何を?」 

響「そ、そこまでは…」 

ヤン「司令官というものはそういう訳にはいかなくてね。兵士たちの家族まで肩に乗せなければならないんだ。敵味方関係なくね」 

ヤン(もっとも、私を名将扱いする人間たちは、そんな苦労があるだなんて想像もしないだろうけどね) 

響「なんか…不安になってきたぞ…」


24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 00:56:49.29 :UK+1fNokO

ヤン(おっと。どうやら奴さん、こちらの掘った穴に片足を突っ込んでくれたようだ) 

ヤン「では、辞めるかい?」 

響「えっ!?」 

ヤン「いまなら君の傷は浅くて済む。それに私としても、若い女の子の涙を見なくて済むからね。一石二鳥という訳さ。いや、君にかかる経費のことを考えれば三鳥かな?」 

響「で、でも…自分は…」 

ヤン「君は?何かね?」


32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:01:44.22 :UK+1fNokO

響「か、家族がいるから…絶対に成功して、沖縄の母親にラクをさせてやりたい!」 

ヤン(絶対ねぇ…世の中に"絶対"なんてものが存在するのなら、もう少しマシなんだろうけどね。自分の人生も、他人の人生も) 

ヤン「そのために君は何が出来る?」 

響「な、何でもやる!」 

ヤン「なるほど。その意気込みは大いにけっこう」


36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:05:52.09 :UK+1fNokO

響「自分は何すればいい?」 

ヤン「ふむ…こいつは私の持論なんだけどね」 

響「うん」 

ヤン「気に食わない相手に対して、敬語など使う必要は無い」 

響「え?え?」 

ヤン「年下から『敬語を使いたい』と思われないような年長者は、それだけの価値しかないんだ」 

響「そ、そうなの?」


42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:10:37.15 :UK+1fNokO

ヤン「ただし、世の中に"方便"という便利な道具がある」 

響「方便?」 

ヤン「うん。分かりやすく言うなら"お互いの為の嘘"さ」 

響「嘘を付くの?」 

ヤン「それによってお互いの利益が保証される、あるいは損なわれない場合に限っては許される」 

響「またよく分からなくなってきたぞ…」 


46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:16:59.38 :UK+1fNokO

ヤン「端的に言うとね、"仕事のために敬語を使いなさい"ってことさ」 

響「…うん?」 

ヤン「先ほど私が言ったことと矛盾していると思っているね?」 

響「…うん」 

ヤン「先ほど言ったのは"個人の感情及び感傷としての"敬語の話だ。いま言ったのは"戦術的及び戦略的、ついでに政略的"な敬語」 

響「…えっと…えっと…」 

ヤン(いい具合に混乱してきたな)


47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:20:53.35 :UK+1fNokO

ヤン「君が敬語を使ったとしよう。困ったり気分を害する人間はいるかい?」 

響「…いない」 

ヤン「逆の場合は?」 

響「…たくさんいそう」 

ヤン「そういうことさ。私だってトリューニヒトの野郎に…」 

響「え?誰のこと?」 

ヤン「いや、失敬。極めて"個人的感情及び感傷"な話さ」 

響「?」


52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:26:05.78 :UK+1fNokO

ヤン「まぁ、そんなような理由さ。君は敬語を使いながら、心の中で舌を出していればいい。そうすればトラブルも無用の減るだろうし、第一、私がラクを出来る」 

響「…ふふ」 

ヤン「おや?私はジョークを言ったつもりは無いんだがね」 

響「なんか面白かったぞ」 

ヤン「そいつはけっこう。どうやら私にもユーモアのセンスがあったようだ」 


58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:31:26.01 :UK+1fNokO

響「プロデューサーにも敬語を使った方がいいの?」 

ヤン「君の自由さ」 

響「なんか…敬語使いたくないな…いや、尊敬できないとかそういうワケじゃなくて、なんて言うか…友達みたいだからさ」 

ヤン「そいつは素晴らしい。実に民主主義的だ」 

響「じゃあ、このままでいいの?」 

ヤン「好きにしなさい」 

響「やったぁー!」 


61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:37:11.37 :UK+1fNokO

ヤン(年齢的にはユリアンと釣り合いそうではあるな) 

響「頼りになりそうなプロデューサーで良かったさー!」 

ヤン(しかしなぁ…ユリアンはどうやら奥手なようだし、こういうタイプは手に余るかもしれないな) 

響「これからよろしくね、プロデューサー!じゃあ、やよいを呼んでくるね!」 

ヤン「ん?ああ、よろしく」 

バタンッ 

ヤン「…私よりもポプランに似合いそうな仕事だな。まぁ、監視役としてムライを付けるけどね」


63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:41:34.53 :UK+1fNokO

コンコン 

ヤン「どうぞ」 

やよい「失礼しまーっすぅ!高槻やよいですぅ!」 

ヤン「うん。どうぞ座って」 

やよい「はーい!」 

ヤン(3個艦隊と連戦か…自分で言い出したこととはいえ、我ながら素晴らしい勤労精神だな。さてと…)


64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:47:41.22 :UK+1fNokO

やよい「…」ニコニコ 

ヤン(…この笑顔が消えてしまわないのであれば、戦争も悪いものではないのかもしれないな) 

やよい「プロデューサー?」 

ヤン「ああ、すまない。ヤン・ウェンリーだ」 

やよい「はい!今日からよろしくお願いします!」 

ヤン(もっとも、私にそんなことを願う資格などありはしないのだが。私は一体どれほど、帝国の子供たちから笑顔を奪ってしまったことだろう…)


66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:54:24.77 :UK+1fNokO

やよい「プロデューサー…なんだか悲しそうな顔してますぅ…」 

ヤン「いや、今夜の食事の心配をしていたんだ。またサンドイッチかもしれない、ってね」 

やよい「私の家に来てもらえたら、ご馳走しますよぉ!今夜はもやしパーティーなんですぅ!」 

ヤン「そいつは素晴らしい。しかし、残念ながら我が愛しの新妻と白兵戦を演じるつもりは無いんだ。第一、勝ち目が無い」 

やよい「えへへ。奥さんが怖いんですかぁ?」 

ヤン「怖くはないさ。恐ろしいだけでね」


67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 01:58:42.10 :UK+1fNokO

やよい「優しそうなプロデューサーで良かったですぅ」 

ヤン(優しい、か。そう在りたいね。せめて、自分を慕ってくれる人たちに対しては) 

やよい「私はどんな活動をしていけば良いんですかぁ?」 

ヤン「ふむ…実のところ、良くわからないをだ」 

やよい「へ?」 


71:>>68大丈夫。人いないのは慣れてるからwww:2012/04/02(月) 02:04:10.90 :UK+1fNokO

ヤン「世の中には"兵法"という便利なものがあってね」 

やよい「ひょうほう?」 

ヤン「戦いに勝つための手段を書き連ねた、ありがたいテキストさ」 

やよい「私…戦いたいわけじゃ…」 

ヤン「おや?自分自身とも戦わないつもりかい?」 

やよい「い、いえ、そういうわけじゃ…」


75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 02:13:00.59 :UK+1fNokO

ヤン「その中にこんな一節がある。"敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず"ってね」 

やよい「どういう意味ですかぁ?」 

ヤン「自分と相手ね長所や短所、それに武器や懐具合諸々を知り得ていれば、必ず勝つということさ。もちろん、"比較"と"研究"が前提だけどね」 

やよい「それを知らなければ?」 

ヤン「必ず負ける」 

ヤン(もっとも、"玄人"を自称するものほど、そういった原典を無視して自己の原理を確立したがるものだけどね)


77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 02:16:35.81 :UK+1fNokO

ヤン「いまは君の活動方針についての話だから、敵に関してはひとまず置いておこう」 

やよい「はい」 

ヤン「では質問。君の長所は?」 

やよい「え?私の…えっと…」 

ヤン「事務所の人たちは教えてはくれなかったのかい?」 

やよい「あの…」 

ヤン「何だい?」 

やよい「みんな、"やよいは可愛い"って言ってくれました…」


80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 02:22:38.50 :UK+1fNokO

ヤン「うん。それは嘘偽りの無い誉め言葉だと思う。だけどね」 

やよい「だけど?」 

ヤン「この事務所の他のアイドルもそうだろう?」 

やよい「はい!みんなとっても可愛いですぅ!」 

ヤン「ということはだ。君だけの長所というわけでは無い」 

やよい「あ…」 

ヤン「"特徴"ではあっても"特長"ではない。分かるかい?」 

やよい「は、はい!」


83:>>76全員じゃないwww 3人だけwwwww:2012/04/02(月) 02:28:56.16 :UK+1fNokO

ヤン「プロフィールを見た率直な感想を言わせて貰う」 

やよい「お、お願いします!」 

ヤン「歌、ダンス、演技。いずれにおいても、武器になりそうな物は無い」 

やよい「…」 

ヤン「気落ちしなくてもいいさ。私だって、射撃やスパルタニアンの操縦に関しては赤点スレスレだったんだ」 

やよい「すぱるたにあん?」 

ヤン「いや、そこは気にしなくてもいい。私が言いたいのは、"人間、何か取り得がある"ってことさ」


84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 02:32:08.36 :UK+1fNokO

やよい「取り得…ですかぁ…」 

ヤン「失礼な言い方かもしれないけどね」 

やよい「いえ、気にしないで下さい」 

ヤン「ああ、気にしてないさ」 

やよい「う?」 

ヤン「さて。私が思う君の"取り得"だが…」 

やよい「は、はい!」


86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 02:36:22.61 :UK+1fNokO

ヤン「3つある。1つ、身長の低さ」 

やよい「と、取り得じゃないですぅ!」 

ヤン「おや?そうかい?」 

やよい「だって…この事務所でも一番低いし…」 

ヤン「では質問。この事務所のアイドルを横一列に並ばせたとき、一番目立つのは?」 

やよい「それは…一番背が高いあずささんです」 

ヤン「それに君だ」 

やよい「え!?」


88:>>85空戦技術って項目があったような…:2012/04/02(月) 02:41:35.23 :UK+1fNokO

ヤン「横一列の場合はね」 

やよい「そうなんですかぁ!?」 

ヤン「ああ。"小さくて目立つ"ということもあるんだ」 

やよい「そうなんだぁ…」 

ヤン「取り得2つ目。声のユニークさ」 

やよい「あ、それはよく言われるかもです」 

ヤン「うん。個性的で可愛らしい声をしているね」 

やよい「えへへー」


89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 02:47:35.22 :UK+1fNokO

ヤン「ただ、滑舌の面で問題があるね」 

やよい「うぅ…それもよく言われますぅ…」 

ヤン「それほど深刻なことではないよ。トレーニング次第で改善は可能だ」 

やよい「ホントですかぁ!」 

ヤン「ああ。私は専門家ではないから、どれくらいの期間がかかるのかまでは分かりかねるけどね」 

やよい「が、頑張ります!」 

ヤン(素直な子だ。爪の垢を煎じて"彼ら"に飲ませたいくらいだ)


92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 02:52:27.19 :UK+1fNokO

ヤン「そして取り得3。いや、取り得という言い方は相応しくないな。何しろ、君の最大の武器だ」 

やよい「な、なんですかぁ?」 

ヤン「君は長女だ」 

やよい「は、はい」 

ヤン「しかし、妹でもある。存在感という意味でね」 

ヤン(本来なら、"存在感"なんて非科学的な言い方はしたくないんだがね) 

やよい「長女なのに、妹みたいな存在感…」


94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 02:59:08.59 :UK+1fNokO

ヤン「これは稀有なことだと思う。姉と妹という二律背反な要素を、ごく自然に身に付けているんだからね」 

やよい「にりつ…うぅ?」 

ヤン「本来ならば相反する要素、とでも言うのかな?大きいのに小さい。速いのに遅い。いまのは飛躍した表現だけどね」 

やよい「な、なんとなく分かりますぅ!」 

ヤン「そいつは結構。"なんとなく"分かるかどうかで、その後の人生が大きく変わってくるからね」 

やよい「はい!」


95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 03:03:15.49 :UK+1fNokO

ヤン「短所についても話をしておきたいんだが、残念ながら君の後にもう一人控えていてね」 

やよい「また今度ですかぁ?」 

ヤン「ああ。しかし、これからの基本的な方針については話しておこう」 

やよい「はい!」 

ヤン「これからの君の活動の要になるのは、ズバリ、"声優"だ」 

やよい「せ、声優…ですかぁ?」


97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 03:09:50.36 :UK+1fNokO

ヤン「先ほど話した3つの取り得。それを最大限に活かせるのは、どうやら声優という職業のようだ」 

やよい「で、でも…演技が…」 

ヤン「現時点ではね。それに歌やダンスと比較すれは、演技には上達の可能性がありそうだからね」 

やよい「ホントですかぁ!」 

ヤン「うん。そして私が事前に調べた情報によれば、声優ファンは小柄で清潔感のある女性を好むようだ。君のようなね」 

やよい「う、うっうー!」 

ヤン「何だいそれは?」 

やよい「す、すいません。嬉しいときの口癖なんです…」 


99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 03:19:17.32 :UK+1fNokO

ヤン「"姉で妹"という要素も、幅広いファン層の獲得に役立つだろうね。これは声優ファンに限らないだろうけどね」 

やよい「なんだかやる気が出てきましたぁ!」 

ヤン「ハハ。私もたまには善行を為すようだ」 

やよい「ありがとうございます、プロデューサー!」 

ヤン「お礼を言うのは君が売れてからでも遅くはないさ」 

やよい「はい!それじゃあ、千早さんを呼んできますね!」 

ヤン「ああ、よろしく頼むよ」 

バタンッ 

ヤン「それまで帝国が待ってくれたらの話だけどね。いや、同盟のお偉方が妙な労働意欲に目覚めなければ、というべきかな?」 


101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 03:24:17.89 :UK+1fNokO

コンコン 

千早「…失礼します」 

ヤン「もう少し大きな声で頼むよ。自分ではまだ若いつもりなんだが、最近耳が遠くてね」 

千早「…失礼します!」 

ヤン「結構。よく聞こえたよ。入りなさい」 

千早「如月千早です」 

ヤン「ヤン・ウェンリーだ」 

ヤン(さてさて。一番面倒…いやいや、戦い甲斐のある相手がおいでなすったぞ)


103:>>100ビッテン「くぎゅうぅぅぅぅ!!!!」:2012/04/02(月) 03:31:27.80 :UK+1fNokO

千早「何かご用ですか?」 

ヤン「おや?用も無いのに呼びつけるほど、私は暇では無いつもりだがね」 

千早「…ご用件は?」 

ヤン「まず座ったらどうだい?どうやら椅子というのは、座るためにあるらしいのでね。私の書いた辞書にそう記してあったから、間違いは無いはずだよ」 

千早「…失礼します」ストン 

ヤン(おやおや。どうやら完全武装で出向いて来たらしい) 

千早「早くご用件を仰って下さい。私もあなたと同じで、暇ではありませんから」 

ヤン(残念ながら、経験不足は否めないようだがね)


107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 03:38:16.60 :UK+1fNokO

ヤン「君のプロフィールを見せて貰ったよ。あくまで仕事のためだ。気を悪くしないでくれ」 

千早「…」 

ヤン「ふむ…"自分は不幸だと"いう顔をしているね」 

千早「なっ…」 

ヤン「おや?私の勘違いだったかな?」 

千早「あなたにお話するつもりはありません」 

ヤン「では、代わりに私の身の上話をしようか。何、2分もあれば済む話だよ」 

千早「…ご自由に」


110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 03:45:37.02 :UK+1fNokO

ヤン「15歳のときに父親を亡くした。ぐうたらな父親でね。彼に似なくて本当に良かったよ。母親の顔は覚えていないんだ。私が幼いときに亡くなった」 

千早「…」 

ヤン「残ったものは親父が集めていたガラクタの山。そして私は、タダで歴史を学ぶために士官学校に入った。以上。おや?どうやら2分も必要無かったらしい」 

千早「…」 

ヤン「何か質問は?」 

千早「いえ…」 

ヤン「では、私からの質問だ。なぜ君は、"自分だけが不幸だ"という顔をしているんだい?」 

千早「えっ?」


112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 03:51:07.58 :UK+1fNokO

ヤン「私の家に君と似た年齢の男の子がいる。彼は12歳のときに父親を亡くした。私と同じく母親の顔は覚えていないそうだ」 

千早「…」 

ヤン「そして私が保護者となり、私の薫陶を受けて立派に成長している。彼の淹れるアイリッシュ・ティーは絶品なんだ」 

千早「私は…」 

ヤン「何かな?」 

千早「事故で弟を亡くしました…」 

ヤン(すまないね。知っていたよ)


115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 03:56:42.80 :UK+1fNokO

ヤン「お悔やみ申し上げる。心からね」 

千早「ありがとうございます…弟は優という名前でした。私の歌を聴いて…いつも喜んでくれていました」グスッ 

ヤン(やれやれ…戦術とはいえ、女の子を泣かせてしまった。ここにキャゼルヌ先輩がいなくて良かったよ) 

ヤン「いまはどうだい?君の歌で喜んでくれる人はいないのかい?」 

千早「それは…」 

ヤン「気にする余裕も無かった?」 

千早「はい…」


117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 04:05:26.34 :UK+1fNokO

ヤン「本当のことを言うとね。"死"というものに関して、君に何か言う資格など無いんだよ、私には」 

千早「それは…なぜ?」 

ヤン「私が人殺しだからさ」 

千早「えっ?」 

ヤン「私の指揮によって、おそらく何百万万単位の敵兵が戦死した。部下に対してもそうだ。"ヤン艦隊は7割が帰還した"のだと人は讃えるが、3割は死なせたんだ。他でもない、この私がね」 

千早「…」 

ヤン「そして兵士達の後ろには、彼らの家族がいる。友人や恋人もね。彼らは私を許さないだろう」


118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 04:10:27.45 :UK+1fNokO

千早「ですがそれは…」 

ヤン「いや。そう思うない人間は、そもそも軍人などやるべきではないんだ。"自分が死なせた"と思えない人間が医者をやるべきでないのと同じでね」 

千早「私は…」 

ヤン「ああ、すまない。君はアイドルになるんだったね。役に立たない話をしてしまった」 

千早「私は…歌うことを楽しんでもいいのでしょうか?」


120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 04:16:03.93 :UK+1fNokO

ヤン「いままでは楽しんでいなかったんだね?」 

千早「はい…」 

ヤン「"音を楽しむの"が音楽だったはずだが。私の書いた辞書によればね」 

千早「歌っているときはいつもあの子の顔が浮かんできて…そしたら…申し訳なくて…」グスッ 

ヤン「君はお腹が空かないのかい?」 

千早「え?」 

ヤン「美味しいものを食べているときは、申し訳なくならないんだろう?」 

千早「そう…ですね」


122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 04:24:32.33 :UK+1fNokO

ヤン「それなら答えは簡単さ。"悲しむ自分に酔っている"」 

千早「そ、そんなことは…」 

ヤン「おや?思い当たる節は無いかな?」 

千早「えっと…」 

ヤン「歌というものも悲しみというものも、それ自体が自己陶酔しやすいものだ。君の場合は、2つの相乗効果だね」 

千早「私が自己陶酔するために悲しんでいると仰るんですか?」 

ヤン「それ以外の意味に聞こえたのなら、私の言い方が悪かったんだろうね」 

千早「くっ…」


123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 04:31:36.18 :UK+1fNokO

ヤン「身に覚えはありそうだね」 

千早「…はい」 

ヤン「うん。それが分かっただけで十分だ。ひとまず今日の所はね」 

千早「…私は」 

ヤン「何かね?遠慮せずに言いなさい」 

千早「あなたを好きになれないかもしれません。人間として」 

ヤン「ああ。それで構わないよ」 

千早「ですが…信用はできる気がします」 

ヤン「…光栄だよ、ミス如月」 


124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 04:37:01.56 :UK+1fNokO

千早「千早で構いません。私もプロデューサーとお呼びしますから」 

ヤン「分かったよ、千早」 

千早「これからも…その… 

ヤン「何だい?」 

千早「気がついたことは、遠慮せずに仰って下さい」 

ヤン「もとよりそのつもりさ。私はこうみえても短気でね」 

千早「…ふふ」 

ヤン「ハハ、やっと笑ってくれたね。これ以上、誰かの泣き顔は見たくないんだ。出来る限りその笑顔でいてくれ」 

千早「えっ!…えっと…その…」


127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 04:45:19.49 :UK+1fNokO

ヤン「さて。先ほどの2人と合流して、食事でも取ろうか。生きている人間は死んだ人間の分まで食べなければいけないからね」 

千早「は、はい!」 

ヤン「うん、いい返事だ」 

ヤン(やれやれ。隠れ蓑のつもりだったんだが) 

響「あ、プロデューサー!もう終わったの?自分、お腹減ったさー!」 

やよい「私もですぅ!」 

ヤン「うん。4人で食事に行こう」 

ヤン(どうやら退屈せずに済みそうだな!) 




お し ま い


128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/02(月) 04:46:51.35 :UK+1fNokO

おしまい 

銀英伝好きな人が多くて驚いた! 
そして嬉しかった! 
支援&レス感謝 

読み返してきまーす


元スレ
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1333291635